ビジネス

2020.07.02

アマゾンが脱炭素推進ファンドを開始、イーロン・マスクへの挑戦状か?

ジェフ・ベゾス(左)、イーロン・マスク(右)/ Getty Images

テスラのイーロン・マスク(Elon Musk)と、アマゾンのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)は、お互いに対して、さらには相手が営む事業について、時として忌憚のない意見をぶつけ合う間柄だ。そして今、ベゾス率いるアマゾンが、マスク率いる会社の事業領域に(ごく小さな一歩とはいえ)入り込んできた。新たに、炭素排出の削減を目指す投資ファンド「クライメート・プレッジ・ファンド(Climate Pledge Fund)」を立ち上げたのだ。

と言っても、このファンドの規模はとても小さいため、マスクはおそらくこの動きを一笑に付すだろう。だが、巨大企業であるアマゾンが、この分野でさらに大きな野望を抱いているのでないかと、マスクが不安を覚えることはないのだろうか?

マスクは、電気自動車メーカーのテスラと、宇宙での輸送事業を手がけるスペースX(SpaceX)を率いる、テック界のビリオネアだ。一方のベゾスは、オンライン小売界の超大手企業アマゾンの創業者であり、さらに、マスクの会社と比べると実績では見劣りするものの、やはり宇宙での輸送事業を目指す企業ブルーオリジン(Blue Origin)を立ち上げた、テック界のビリオネアだ。

さらに2人には、世界でもトップクラスに名の知れたセレブリティ起業家という共通点もある。この2人に知名度で並ぶ起業家は、あとはビル・ゲイツとマーク・ザッカーバーグくらいのものだろう。

マスクは6月5日、ベゾスが率いるアマゾンを直接的に攻撃する内容のツイートを投稿した。そのきっかけは、ニューヨーク・タイムズの元記者アレックス・ベレンソン(Alex Berenson)が執筆した、新型コロナウイルスによる外出制限を批判する本について、アマゾンが同社の電子書籍サービス「キンドル」での配信を拒否したことだった。この報道を目にして、マスクは3600万人のフォロワーに対してこう呼びかけた。「アマゾンを解体すべき時がきた。独占は間違っている!」

(その後、アマゾンが方針を変えたため、今ではこの本はアマゾンでも入手可能になった。方針変更は、マスクがツイートを投稿した後のことだったが、このツイートを受けて変更されたのかどうかは不明だ。)

そしてアマゾンは6月25日、クリーンエネルギー技術の開発を支援する、20億ドル規模の社内ファンドを立ち上げると発表した。アマゾンが投資を予定しているセグメントには、運輸やバッテリー技術も含まれている。どちらも、直接的にテスラの事業に関わる分野だ。

このファンドの20億ドルという金額は、環境分野への投資としては取るに足らないものだ。これだけの額ではたいしたことはできないだろう。また、アマゾンは今のところ、テスラのライバル企業として名乗りを上げているわけではない。とはいえアマゾンは、株式の時価総額が1兆ドルを超える巨大企業だ。この20億ドルのファンドは、ほんの始まりにすぎない可能性がある。

マスクは今、自身にこう問いかけているに違いない。果たしてベゾスは、豊富な資金力にモノを言わせてバッテリーや電気自動車事業に進出し、テスラと真っ向から張り合う意志があるのだろうか?と。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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