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「出版界のロックスター」マルコム・グラッドウェル新作、全米150万部の理由
単語の穴埋め問題から何がわかる?
次の単語を見て、二文字分の空白を埋めてほしい。深く考えずに、直感で答えてみよう。
G L _ _
これは単語補完タスクと呼ばれるもので、心理学者は一般的に記憶機能などを検査するためにこれを利用する。
私は二文字を足してGLUM(陰気)という単語を作った。ぜひ私のこの答えを覚えておいてほしい。次の単語は──
_ _TER
私はHATER(憎む人)という単語を作った。これも覚えておいてほしい。ほかにもこんな問題がある。
私はGLUMとHATERからタスクをはじめ、次のような単語を作っていった。SCARE(恐怖)、ATTACK(攻撃)、BORE(退屈)、FLOUT(侮辱)、SLIT(隙間)、CHEAT(不正)、TRAP(罠)、DEFEAT(敗北)……。なんと病的で憂鬱なリストだろう。でも、これは私という人間の闇の部分について何かを暗示するものではないはずだ。私は憂鬱な性格ではなく、むしろ楽観的だ。はじめにGLUMという単語を思いついたせいで、似たような暗い単語ばかりが頭に浮かんできたのだと思う。
自分については問題ない。でも他人については……
数年前、エミリー・プロニン率いる心理学者のチームが被験者に同じタスクを課し、単語の空白を埋めるよう指示した。次にプロニンは、私と同じ質問を投げかけた。あなたが選んだ単語は、自身について何を示していると思いますか? たとえば、「TOU_ _」からTOUCH(触れる)という単語を作った人と、TOUGH(厳しい)という単語を作った人の性格は異なるのだろうか? 被験者の多くは私と同じ立場を取り、ただ適当に思いついた単語にすぎないと答えた。
「このような単語補完タスクで私の性格を診断できるとは思えません」とプロニンの実験の被験者のひとりはアンケートに書いた。ほかの被験者たちもみな同じような意見だった。
「この単語補完は、自分の性格について何も教えてくれません……ただのランダムな穴埋めにすぎません」「ぼくが作った単語の一部は、自分の世界観とは正反対のものです。たとえば、つねにSTRONG(強い)、BEST(いちばん)、WINNER(勝者)になることにこだわりたくはありません」「できた単語が自分について何かを明らかにしているとは思えません。すべて偶然の結果です」「まったくちがいます……語彙力が明らかになるだけです」「性格と関係しているとは思いません……単語はどれもランダムに思いついたものです」