「足りない」ままでいいのか 音楽の現場が模索すべきニューノーマル


一様な音楽の楽しみ方に一石を投じたい


世のマインドフルネスブームの影響がどこまであるのかは定かではないが、アンビエントミュージックはここ数年で再ブームの兆しがあり、作家もリスナーも増加している。音楽サブスクリプションサービスが提供するプレイリストでも、アンビエント関連のものが非常に多く作られている。
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それに呼応して、例えば渋谷のライブハウスWWWではスタンディングではなくフロアの好きな場所に腰を下ろし思い思いの格好でアンビエントミュージックが楽しめるイベント『Balearic Park』が開催され、また山梨県ではアンビエントミュージックに特化した野外フェスティバル『CAMP Off-Tone』がチケットが売り切れるほどの人気を博すなど、その受け皿は少しずつ用意されていた。これは、ニッチな音楽ジャンルの広まりの話である以上に、固定化されている部分が多分にある音楽ライブ、コンサートの楽しみ方に多様性をもたらすための進歩の話でもある。

いまや一大産業に発展したフェスカルチャーにしても、エキサイトするための場所、というイメージがある。祭りは本来、祈りを捧げるだけでも祭りであるはずだ。菊地さんは、自らフェスの主催者でありながらそんな「フェスの形骸化」への疑念と向き合っていた。

「アンビエントミュージックは分かりやすいポップな音楽ではありません。でも、みんなが盛り上がらなくて良いライブやフェスもあっていいはず。アンビエントじゃ盛り上がらない、有名アーティストがいないと人が集まらない、というのはイベントをやる本質的な部分とは違う。
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それよりも、その体験が良いものかどうか。客寄せの要素があるかよりも、良い体験ができるかを改めて問いたかったんです」

各地で気軽に開催できるポータブルなフェスを


『DRIVE IN AMBIENT』は、非接触型のイベントとして徹底した運営方法を実践していた一方で、非常にコンパクトなサウンドシステムを構築していた点が興味深い。後藤さんは、より気軽で身近な野外イベントを広める構想を思い描いているという。



「静かな音楽なので、電源を発電機にするとその音が音楽に干渉してしまうため、音響のための電源はポータブル電源でまかないました。スピーカーも充電式にしたので、配線も少なくてエコだし、費用もかなり少なく抑えられました。

このセッティングなら極論、車が入れるところならどこでも開催できます。『DRIVE IN AMBIENT』は絶景や自然の環境音も楽しんでもらいたいので、人工的なステージも組みません。

ノウハウが固まってくれば体制もよりコンパクトにして、身軽にイベントを打てるようになるし、参加するお客さんもフェスにいくよりも気軽に日常的に参加できるようになればいいと思っています。

そもそもイベント開催に関しては人数制限やソーシャルディスタンスを設けなくてはいけないので、低コストで数を打っていかないと採算がとれない状況があります。であれば、あまり大規模にはせず、車50台くらいの規模で定期的に全国を回って、近いところで開催されていたら参加する、くらいのノリで来てもらうのが理想ですね」


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文=三木邦洋、編集=千野あきこ

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