報告書は、企業が債務を支払えなくなるリスクが切迫感を帯びてくる一方、景気回復のタイミングは読みづらいため、支払い不能だが存続可能な企業(事業再編が必要な企業)と、支払い不能で存続不可能な企業(清算すべき企業)を見極めるのが難しくなっているとも指摘している。
BISによると、支払い不能リスクは負債水準の高まりによって深刻になってきており、債務負担に耐えきれなくなる企業も出てくる可能性がある。
報告書は、裁判所への破産申し立てが急増した場合、裁判所の能力が逼迫して事業再編が進まなくなるおそれがあるとも警告している。
報告書の公表にあたり、BISのアグスティン・カルステンス総支配人は、企業が直面している別の問題として、十分な手元資金を持っていない企業が多いことを挙げた。
また、世界経済はまだコロナ危機の初期段階にあるとの認識を示し、長期的に深刻な影響が出てくるとも予想した。
後遺症は金融危機よりも深刻か
一方で、各中央銀行がコロナによるダメージを軽減するためにとってきた行動によって雇用が守られ、金融の安定が図られてきたと述べ、当局によるこれまでの対応を高く評価した。
今後、景気回復の足取りがしっかりとしてくるにつれて、インフレが再来するとの見通しも示した。
BISの報告書は「コロナ禍では2008〜09年の金融危機以上に経済活動が急激に腰折れした。多くの国・地域が1四半期に年率換算で25〜40%縮小し、数カ月のうちに失業率が十数%に達した国・地域もある」と記述。コロナ禍の後遺症は金融危機の後遺症よりもさらに深刻で長期化する可能性があるとしている。
コロナ禍の前に金融市場で積極的なリスクテーキングが広く行われていたことも指摘し、各国・地域の金融監督当局は今回、規模も範囲も金融危機の時を超える対応をしてきたとした。
報告書ではこのほか、大手テック企業やフィンテック企業が伝統的な金融機関にとって競争上の大きな脅威になっているとも言及している。