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ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座


プレスティージキュヴェの「1086」


2018年、ナイティンバーは満を持して、プレスティージキュヴェ「1086」を発表した。優れた収穫年にしか造られない特別なキュヴェで、畑の区画ごとに醸造をした100種類以上のワインの中から、最良の区画を厳選してブレンドし、7~9年以上もの熟成を経た渾身作だ。

「1086」は、その歴史を表している。世界初の土地台帳である「ドゥームズデイ・ブック(Domesday Book)」に、ナイティンバーの土地の名が記されたのが1086年なのだ。その土地の歴史は、実に900年以上前に遡る。

2009年の収穫年のブドウから造られた「1086プレスティージキュヴェ」は、シャルドネ46%、ピノ・ノワール43%、ムニエ11%の構成。

青リンゴや洋梨、オレンジやクランベリーの果実にキャラメルやブリオッシュの味わいが加わり、少し熟成した複雑なワインだ。きれいな酸味が骨格を作っているが、熟成とともにやや丸みがでて、様々な要素が一体となっている。



「1086プレスティージキュヴェ・ロゼ」は、2010年の収穫年のブドウで造られ、ピノ・ノワールが75%とシャルドネが25%。ラズベリーや苺の果実に、甘いスパイスやキャンディのニュアンスが加わる。第一印象はチャーミングで明るい印象だが、味わいは複雑で真剣なワイン。甲殻類や鴨の料理など、ガストロノミックな料理との相性もよさそうだ。

このプレスティージキュヴェ「1086」は、厳しいイギリスのワイン評論家たちからも高評価を得ていて、イギリスのスパークリング・ワインのさらなる可能性を示している。

ナイティンバーのこれから


オーナーと醸造家の二人三脚で、名声を高めているナイティンバーだが、畑を拡大するなど、これからの進化からも目が離せない。スプリッグス氏は、こう語る。

「イギリスは、冷涼で厳しい気候条件で、毎年のブドウの収量や質の差も大きく、チャレンジも多いですが、この地の畑の特性を表現するようなワインを造り続けたいです」



このコロナ禍で、世界中で渡航制限が続くことに伴い、ワイナリーに実際訪問する取材も難しくなった。しかし、ワイン業界でも様々な新しい試みが始まり、オンラインでワイナリーや醸造家をつないでのウェビナーも増えた。

なかには畑や醸造施設から中継する生産者もいて、現地に行かずとも現地の様子を知ることができる。自宅にいながらワインが学べるのは、ワインラバーにとってはポジティブな変化だ。

今回の取材も、醸造家ふたりとのビデオ会合による取材で行われた。美しいナイティンバーの土地に思いを馳せながら、人々がまた自由に行き来でき、実際にこのワイナリーを訪問できる機会を待ちたい。

島 悠里の「ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座」
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文=島悠里 写真=ワイナリー提供

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