政府のコロナ対応で重視すべきは命か経済か? 日本など各国の見方は

安倍晋三 首相 / Getty Images

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は今年5月、米議会上院の委員会の公聴会で証言し、次のように警告した。

「各州が経済活動の再開を急ぎすぎれば、新型コロナウイルスの大流行が制御不可能になる現実的なリスクがある」「時期尚早の経済活動の再開は、苦しみと死をもたらすだけでなく、経済の回復を遅らせる可能性もある」

米国の1日当たりの新規感染者数は4月24日に3万6738人となり、その後は徐々に減少していたことから、同日でピークに達したとの見方もあった。パンデミック(世界的流行)にも終わりが見え始めたのではないかともみられていた。

だが、経済活動の再開が加速度的に進むにつれて、ファウチ所長の警告には十分な根拠があったのだと考えられるようになっている。本当に制御不可能になったのではないかという恐怖感のなか、米国の感染者数は憂慮すべきペースで増加。新規感染者数は6月26日に4万5300人に達し、再び過去最多を更新した。

政府に突き付けられる問題


ドナルド・トランプ大統領は、感染者数がピークを過ぎたのではと考えられたころよりも前から、各州政府に経済活動の再開を要請。感染に対して弱い立場にある米国人が受ける影響への配慮はないようにみえた。

そうしたなかで持ち上がるのは、「政府は経済的な損失を被っても、できるだけ多くの人々の命を救うべきか」、あるいは「予防措置を取って市民を安全に守るよりも、雇用を守るべきか」という難しい問題だ。

新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な影響を受けたイタリア、スペイン、ドイツ、フランスなど多くの国は、その後の感染拡大を防ぐため、検査と接触者の追跡調査の有効性が維持できると考えられる水準にまで感染率が低下してから、経済活動に対する制限を緩和したとみられる。

企業・組織のためのコミュニケーション・サービスを行うエデルマンは先ごろ、毎年行っている信頼度調査「トラストバロメーター(Trust Barometer)」の中間レポート(5月版)を発表した。
次ページ > 最も「人命を重視すべき」と考えるのは日本

編集=木内涼子

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事