ダンスが生きがいのホームレスたちは、コロナ禍をどう生き抜いていくのか

映画「ダンシングホームレス」より(c)TOKYO VIDEO CENTER 2019

路上生活経験者のダンスグループ「新人H ソケリッサ!」は、2007年に初演して以来、ダンス作品を披露してきました。新型コロナウイルスの影響で、練習やイベントができなくなっています。メンバーはどのように過ごしていて、これからの表現はどうなるのでしょうか。主宰する振付師のアオキ裕キさん(51)に聞きました。

原始的な生活に近いおじさんたち


筆者は、アオキさんが芸能界での仕事をしていた時に取材で知り合いました。その後、ソケリッサが始まり、初公演や、2017年の10周年イベントなど、節目に取材してきました。

アオキさんは、マイケル・ジャクソンに憧れてダンスの道へ。仕事に恵まれ、チャットモンチーやラルクアンシェルのミュージックビデオや、CMの振付を手がけるなど、活躍しました。

2001年、ダンス留学したアメリカで、911の同時多発テロに遭遇。表面的なことに価値を置いた生き方にショックを受け、自分の存在は何だろうと考え始めました。

2005年ごろ、東京・新宿でミュージシャンの路上ライブに目を止めると、隣で寝ているホームレスの男性がいました。「全く周りを気にしない様子にひきつけられました。太陽が昇ったら起きる、おなかがすいたら食べ物を探す、暗くなったら心細く感じるというような、原始的な生活に近い彼らの生き方や感覚に興味があり、一緒にダンスをしたいと思いました」(アオキさん)

ホームレス支援をしている「ビッグイシュー」に協力を求め、地道に声をかけてメンバーを探しました。メンバーは、親しみを込めて「おじさん」と呼ばれます。これまで40人以上が参加し、途中で連絡がつかなくなった人もいます。今の主要メンバーは、40代から70代の8人ほどです。

過酷な生い立ち、他人事でない


コロナ禍までは、週に1~2回、東京都内の公共施設を借りて練習し、路上や舞台でダンス作品を発表してきました。
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文=なかのかおり

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