ダンスが生きがいのホームレスたちは、コロナ禍をどう生き抜いていくのか

映画「ダンシングホームレス」より(c)TOKYO VIDEO CENTER 2019


芸術活動ができなくなり、オンラインのコンサートやイベントも増えました。そうした表現の可能性は?

「オンラインのリモート芸術は、お金がある人や通信環境が整った人しか見られない。ソケリッサは、いろいろな人に見てほしい。路上でも、踊ってきましたし。

この状況で分断された中、みんな誰かに会いたがっていますよね。人との関わりは、肉体的にも必要だと思います。1人じゃ何もできない」

「人の営みには、個人と集団の繰り返しが大事だから。人に会わないと、形ある表現は生まれない。そこは、変えられないと思います。

人の本質としては、人と会って密集するべきです。ソケリッサは、個人を生かすための集団の表現です」

流れに逆らわず、体験を体に入れる


直に会うことが必要、と考えるアオキさん。同時に、世の中の流れに従って生きることも大事といいます。

「不自由なことが多い新しい日常生活を、リアルな体験として、ごまかさず、素直に体に刻みたい。路上生活の体験が、おじさんたちの体を作り、存在感や表現に結びついてきたように。

踊れない状況なら、あえて動かないのも一つのやり方です。世の中に逆らわない。ストレスもあるけど、そういう体で世の中に発信することが大事」

「自分自身は、活動資金のためのアルバイトも休みになってしまいました。焦って何かを生み出すより、内省して自分たちの生き方を観察して、世の流れを見ようと思っています。

これから、おじさんたちがどんな動きをするか、楽しみでもあります。ぶつかり合うメッセージ性が響くか、違う受け止め方をされるかは、予想できません」

ダンスのワークショップやイベントを開くのはまだ難しいけれど、アオキさんは練習の再開を待っています。

「そう思っても、おじさんたちが、コロナのストレスで練習に来なくなるかもしれない。あやうさは、常にあります。

911の後に、自分の心の傷をいやしてくれたのが、ソケリッサの活動でした。今度は、傷ついた部分を埋める方法を、みんなと共に探していけたら」

連載:元新聞記者のダイバーシティ・レポート
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文=なかのかおり

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