ダンスが生きがいのホームレスたちは、コロナ禍をどう生き抜いていくのか

映画「ダンシングホームレス」より(c)TOKYO VIDEO CENTER 2019


5月末、アオキさんにオンラインで近況を聞きました。

「公共施設は借りられなくなり、練習もできず、体を動かす機会が減ってしまいました。映画の上映に併せて、渋谷の路上で踊るなど、予定していたイベントも中止になってしまいました。

自粛期間中、数回は主要メンバーのおじさんたちと連絡が取れました。Wi-Fiがあるところに行けば使えるスマホを手にしている人が多く、連絡はつくのですが、ネットカフェが使えなくなって困った人もいます」

「ホステルを安く借りたり、生活保護を受けていたり、みんな屋根の下にはいます。家にこもりきりでストレスがたまっている人、淡々と生活している人、様々です。私から勧めてはいませんが、筋トレを自主的にやっている人も。

在宅の生活で、やりがいがない、コロナが不安、買い物も不安という声も聞きます。体が強くない人もいるので…。一般の人もそうであるように、思いはそれぞれなようです」

ダンスは必要なのか? 立ち位置を考える


アオキさんは、状況を静かに見守っているそうです。「活動を再開する時、どうなるのかということに興味があります。映画が公開になり、たくさんの人に見てもらって活動が広がってと、期待していましたが、出鼻をくじかれた形でした。

でも東日本大震災の時も、911の時もこんな感じでした。被災地に、ワークショップに行っても、自分は何もできないんだ、ダンスは必要なのかという空気がしんどかった。

今も同じで、日常で何を大事に生きるのか、試されています。自分の立ち位置を、考える機会です」


アオキ裕キさん(c)TOKYO VIDEO CENTER 2019

人の本質としては密集すべき


ソーシャルディスタンスも必要な新しい日常を、どうとらえているのでしょうか。

「自粛生活で、都市で生きている体の弱点が見えました。密集した生活、自然のない中で、公園を求めて動くという現象が起きましたよね。生活や生産のスタイルを見直すきっかけにするべきだと思います。

お金のない人に、しわよせがくるのは確かでしょう。おじさんたちの踊りや活動は、今までと違う見え方になる。様々な価値観が変わっていくし、発信の仕方も変える必要があります」
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文=なかのかおり

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