ダンスが生きがいのホームレスたちは、コロナ禍をどう生き抜いていくのか

映画「ダンシングホームレス」より(c)TOKYO VIDEO CENTER 2019


「健康のため」「思い切り体を使って死にたい」など、メンバーの動機は様々です。活動は、自立にもつながっています。練習してお客さんに拍手をもらうと、自尊心が育ちます。おじさんたちに、ギャラや軽食を提供できるよう、やりくりしています。

「それぞれに事情がある。誰しも、ホームレスになる可能性がないわけではありません」とアオキさん。

筆者は、ダンサーのおじさんたちに生い立ちを聞いたことがあります。最年長のコイソさんは70代。ソケリッサの練習は、路上生活で固まった体をほぐすストレッチもあり、体にいいと感じています。社会や家庭から逃げて、10年以上の路上生活を経験しました。

ヨコウチさんは、新聞配達の仕事をしていた43歳の時にメニエール病になり、仕事も住まいも失いました。ホームレスの一時宿泊所に助けられた経験があります。

おじさんたちは自在に体を使い、のびのびと表現します。ソケリッサの練習を取材して感じたのは、アオキさんがプロのダンサーなので、安心感があるということです。体を大事にする指導ができて、おじさんたちの自由な表現を引き出す信頼関係がある。構成や音楽も、エンターテインメントとして光っています。


練習でのコイソさん。ポーズが決まる 著者撮影

自粛生活、それぞれの過ごし方


ソケリッサのダンスや、おじさんたちの日常を描いたドキュメンタリー映画「ダンシングホームレス」(三浦渉監督)がこのたび、完成しました。

1月に開かれた試写会で、筆者は、おじさんたちに再会しました。映画のシーンについてあれこれ話し、自分たちの映画ができたことが、本当に嬉しそうでした。それぞれに過去はあるでしょうが、シャイで優しいのです。

高齢のコイソさんに聞くと、体調には気をつけているそうで、ダンスが生きがいであることは変わらないようでした。 

映画は3月から東京・大阪・愛知で上映されたものの、コロナの影響が大きかったそうです。再び映画館での上映を目指していて、6月末から7月にかけ、神奈川と北海道で上映が決まっています。
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文=なかのかおり

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