ソーシャル・チェンジをもたらす「アート起業家」が必要な理由

いま社会には、「アート起業家」が求められている(Photo by Unsplash)

いわば、アートとは...道義を表すもの、私たち人間の信念を表すものである。それらがなければ、まったくアートとは言えない。
──アイ・ウェイウェイ

「アート」と「ソーシャル(社会的)」はどちらも非常に幅広い意味を持つ言葉です。そして、このふたつの言葉を組み合わせると、意味合いは何倍も複雑になります。「アート」は、個人が何気なく作ったものから、公的な政治的マニフェストまで様々なものがあります。「ソーシャル」とは、定義によると、他者の態度、行為、関係性、交流、関心、意思、ニーズを考慮していることを指します。

社会起業家には、ふたつの概念が同時に含まれます。両者はかけ離れた意味を持ち、共通点があまりないように見えますが、起業活動と社会的使命の融合は、現代社会が抱える深刻な社会問題や環境問題への解決につながると期待されています。高いレベルのイノベーションや、戦略・実行・管理の知識に資金を結びつける起業活動には、非常に大きな力があると広く考えられています。自己の利益と公共の利益のバランスを取り、また、資金の持続性と社会的成果・イノベーション・実行性のバランスを取るムーブメントは、この40年の間に生まれものです。

現代における理想的な起業家や経営者とは、リチャード・ブランソンとマザー・テレサを合わせたような人物と言えるでしょう。社会起業活動の支援に関して世界をリードしているシュワブ財団やアショカによると、より良い社会を願う心を持ち、自らの頭脳と手腕を最も効率的に使う方法を知っている複合型人材が、現在約4000名いるとされています。

このような人材支援は間違いなく成功するはずです。実際、創造性に富んだ多くのアイデアが出ており、何百万もの人が確実にその恩恵を受けています。システムの変化は世界中で起きていて、その典型的な例が、ウィキペディア、フェアトレード、マイクロクレジットです。

eBay、テスラ、Airbnb、Uberなども当初、社会的な問題への対応から始まり、グローバルな市場を開拓しました。例えばeBayの市場では、買い物に不便な地域に住む人々もアクセスできます。高い利益を上げているこの企業が社会変化のために取り組んでいると思うかどうかは、ここで議論することではありません。これらの企業は、数十億人がアクセスでき、数十億ドルを企業の金庫にもたらすような市場を、革新的な技術の進歩によっていかに生み出すかを示すために、よく取り上げられる単なる代表例です。

では、リチャード・ブランソンをピカソやモーツァルトと掛け合わせるとどうでしょうか。アートの価値と経済の価値を組み合わせることに真剣に取り組んだら、どのような高め合いが生まれるでしょうか。「アート」と「社会的アート」の間の違いは何でしょうか。
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文=Andreas Heinecke, Founder and Chief Executive Officer, Dialogue Social Enterprise

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