ソーシャル・チェンジをもたらす「アート起業家」が必要な理由

いま社会には、「アート起業家」が求められている(Photo by Unsplash)


社会変化のためのアートとは?


社会変化のためのアート(ASC)は従来のアート作品とは異なり、特定のスタイル、流派、ムーブメントに属するものではありません。ASCは展示施設や、ステージ、スクリーン、印刷物、その他いかなる素材も、演じ手、観衆さえも必要としません。新たな社会秩序を定義し、社会に関わる上でこれまでとは異なるアプローチ方法を取り、新たな手段、新たな感覚で、新たな環境を設定します。しかし、人々の交流と発展を推進するという目標は、他のアートと共有しています。作品そのものではなく、社会に変化をもたらすためのプロセスがASCなのです。そのため、社会問題の解決を目指すのではなく、それを評価する新たなアプローチ方法を取っています。

これにより、アーティストは新たな立ち位置に置かれます。アーティスト自身や彼らの作品はもはや中心的存在ではありません。アーティストは正確には触媒として捉えられ、観衆との関係を作り上げ、その関係を維持します。ASCは作品の内容よりも、参加や関係の側面に重点を置いているのです。

ASCはコミュニティーと共に取り組み、コミュニティーのために存在するものです。単なる象徴ではなく、現実の環境で、社会的・政治的変化を求めて活動します。それぞれのプロジェクトは社会問題を反映したもので、アート作品が作られるコミュニティーがその活動に関与するようにします。

その結果、アーティスト、クリエイター、プロデューサーは取り扱う社会問題に自分を深く重ね合わせ、個人、組織、環境と関係を作り出します。作品に関わる人々との深いつながり、共感、協力がなければASCの作品を作ることは不可能です。アーティスト、クリエイター、プロデューサーがまずやるべきは、信頼を得て、「私たち」と「彼ら」との間の心の分断を乗り越えることです。それゆえ、コミュニティーや環境は、単にそれぞれのプロジェクトに外から影響を与える要素なのではなく、内在化された一部分なのです。

アートを作る環境に関して、制限はありません。道路、ガレージ、バス、ホテルの部屋など、ASCはどこでも可能です。ギャラリーや博物館で展示したり、メディアで流したり、ウェブで配信することができます。組織の垣根を越え、音楽が流れるのと同じで場所を選びません。その結果として、アートへの親しみが少なく、文化の世界に触れた経験や知識が少ない観衆に広く届けることができるのです。
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文=Andreas Heinecke, Founder and Chief Executive Officer, Dialogue Social Enterprise

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