「個の時代」に、生きるチカラとしての“営業力”を

Ariel Skelley/Getty Images

コロナ禍の影響により、営業を取り巻く世界は大きく変わりました。なかでも、画面越しに行うオンライン商談については、リモートならではの特有の難しさがあります。特に営業の方からよく聞かされる悩みで多いのは、「相手の反応が薄い」というもの。しかしこれは、相手側というより、こちら側の質問力に問題がある場合が多いのです。

反応が薄いとき、相手は別のことを考えている


かつて、営業をやり始めたころ、私は商談の場面で相手の感触がわからず、お客様となかなか会話が噛み合いませんでした。

15年以上前、とある取引先の人事部長との商談でこんなことがありました。

私が熱弁を振るってサービス紹介をしたものの、人事部長は「はい。ありがとうございます」のひと言で、すぐに場は収束気味になりました。

「何か、ご質問ありませんか?」
「いいえ、特にありません」
「では、後ほど追加の資料でも……」
「あっ、大丈夫ですよ、資料は」

こんなやりとりがあり、このままでは商談が終わってしまうと焦る自分がいました。手を替え品を替えあがいてみましたが、人事部長はこちらの話に乗ってきません。結果、当初16時から1時間で予定されていた商談は、17時を少し回ってしまいました。

「時間を過ぎてしまい、すみません。金曜日の夕方なのに」と謝る私に、返ってきた答えは「いいえ、大丈夫ですよ。ただ、社長から言われている別の件がちょっと立て込んでいて……」という言葉でした。

その人事部長は、私のプレゼンを聞いている間も、ずっと社長から言われている別件が気になっていたのでした。そのことを正直に話してくれました。私はそれまで「自分の説明のどこが悪かったのか」と考えていたのですが、先方は他のことで頭がいっぱいだったのです。

私は、社長から言われているという別件について、人事部長から詳細を聞いてみました。すると、こちらで役に立てる情報があることがわかりました。そこで、すかさず関連する情報の提供を行ったのです。

すると、それがとても役立ったようで、その人事部長からは感謝されるとともに、次回以降の商談でも、オープンにいろいろと話してくれるようになりました。

結果として、私が提案していた当初の件についても、受注をもらいました。というのは、人事部長が社長から言われていた件と、当初のこちらの提案内容は、根っこのところではつながっていたからです。

ただし、その人事部長の頭の中では、「社長からの宿題」と「私からの提案」が当初は結びついておらず、別のものとして捉えられていました。私は、そういった事情をいっさい知らないままに、一所懸命にプレゼンしていたのです。

この一連のできごとは、当時の私にとって大きな発見でした。まず、こちらが一所懸命にサービス紹介をしたところで、相手はまったく違った内容を頭の中で考えていることもあるという事実です。違ったことを考えていても、先方は親切に教えてくれるわけではありません。こちらはただ薄い反応に戸惑うのみです。

そして、相手の興味関心をつかんでから説明すると、プレゼンの響き方が変わるというのが、重要なポイントでした。私はそれ以来、反応の薄いお客様に対するアプローチを変えました。

相手の関心事を捉えてから説明すべし


反応が薄いお客様の頭の中には、自分には想像がつかない何かがある。私はそう思って商談に臨むようになり、こちらが説明をする前に、必ず「いま、何がお客様の関心事なのか」を聞くようにしました。

それまでは、商談に臨む前に「今日の場で伝えること」を懸命に考え、開始とともに熱弁を振るっていたのですが、それをやめました。とにかく、相手の関心事を早い段階でつかみ、それを踏まえて商談を進めることにしたのです。

文=高橋浩一

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