PR戦略と行動指針が問われる、「Black Lives Matter」と企業の責任

1968年のメキシコ五輪の表彰台で、国歌が流れる間、金メダリストのトニー・スミスと銅メダリストのジョン・カーロスが人種差別への抵抗を表す「ブラック・パワー・サルート」をおこなったシーンを型取った銅像。銀メダリストのピーター・ノーマンもこの抵抗運動に賛同した(「国立アフリカンアメリカン歴史文化博物館」にて筆者撮影)


先日開催された世界的広告祭、カンヌライオンズ国際クリエイティブ・フェスティバルでも、社会課題に対するグローバル企業の取り組みは、主要議題の一つだった。同広告祭は例年6月に仏カンヌで行われるが、今年は6月22日から26日にかけてライブ配信形式で開催。いくつかのセッションでは、企業、特にブランド企業がどのように#BLMムーブメントを発信し、課題解決に関与すべきなのかという議論がなされた。

2日目には、「Your Instagram Posts Won’t Save Lives. DO SOMETHING DAMMIT!!(インスタの投稿では命は救えない。もっと何とかしろ!!)」と題されたパネルに、アイスクリームブランドのベンアンドジェリーズ社でソーシャル・アクティビズムを統括するジャバリ・ポール、公民権運動専門の弁護士・活動家のベンジャミン・クランプ、NFL選手であり活動家でもあるマルコム・ジェンキンスが登壇した。


パネルの様子。左上から時計回りに、モデレータのデイヴィッド・キム教授、クランプ、ジェンキンス、ポール(筆者によるスクリーンショット)

ポールは、ベンアンドジェリーズは「単にアイスクリームが好きという消費者を、アクティビストに変えていく」という。具体的には、課題に取り組むNGOとのパートナーを組み、自社が持つクリエイティブ力とブランド力で、パートナー団体の取り組みとメッセージをいかに最大化させるかということに注力している。

同社は、環境や社会への配慮や透明性などに関する高い基準を満たす企業に与えられる世界基準「Bコーポレーション」認証を持つ。過去には、難民や環境問題といった地球課題にも取り組んできた。昨年9月には「Justice ReMix’d」というフレーバーを発売し、商品の販売を通じて、米刑事司法の課題に取り組むパートナー団体への寄付と啓発活動をしている。


ベンアンドジェリーズの「Justice ReMix’d」(同社サイトより)。利益の一部をパートナー団体Advancement Projectに寄付している

パネルに登場したクランプやジェンキンスにとって、黒人の差別と不公平の課題は、黒人である自らの日常であり、Black Lives Matterのムーブメント以前から訴え続けてきたことだ(これは、多くの黒人が共有する感覚だ)。

二人は、ようやく多くの白人たちも参画し、世界的な動きとなっていることは評価しつつも、単発的なアクションではなく、しっかりと課題を学び、長期的な視野を持ち、組織内の黒人の声に耳を傾け、本質的な課題解決に取り組むべきだという意見を述べた。

また、「Taking Actions Today for a More Equitable Tomorrow(より公平な未来のためにいま起こすべきアクション)」と題された別のパネルでは、広告業界と音楽業界で活躍する起業家のスティーヴ・ストゥートが登壇。「広告業界自体が、無意識のうちに人種差別を助成してきた」と述べ、人種というデモグラフィー別に予算を割り振り、広告を打つというこれまでのあり方を、業界として改めていくべきだというスタンスを表明した。
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文=MAKI NAKATA

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