ビジネス

2020.07.04 17:00

身の回りのルールをアップデートせよ! 確変型ルールメイク


3:最適停止


ルールメイクは、通常、何かを始めるときに行われる。必然的に、ルールの多くはスタートさせるための決まりごとになり、終わるときのことを考える人は少ない。けれどスタートでなく「終わりをルール化」することで人の動きが変わることもある。

ボストンに「TSURUMEN DAVIS」という人気のラーメン屋がある。大阪随一の人気を誇る「鶴麺」を立ち上げた大西益央さんがつくった「最適停止ルール」は、オープンから1000日のみの限定営業、5年後には店を閉めるというルールを設けている。さらにその1,000日を5つに分割し、シーズンごとに一杯のラーメンを生み、改良し続けて提供。201日目にはどんなに好評でも新メニューに移行するという。最初に終わりを設けることで、それまでに何をするかが明確になる分、提供価値が高まるそうだ。

TSURUMEN DAVIS
2018年4月にオープンした「TSURUMEN DAVIS」では、閉店へのカウントが行われている。

最適停止はもともと、あるビジネスマンが自身の秘書を採用する際、最小の手間で最適な人材に巡り合うための確率を議論する「引き際の数学」とよばれた統計学の概念だ。すべてをサスティナブルに、永続的に運営することを善とする考え方でなく、「最適な」終わりを決めることで見えてくるものを楽しむ発想が、クオリティの向上につながるという確変ルールのアルゴリズムに転用した。

人は知らず知らずに「ルールとは守るもの、守っていれば安全」と認識しがちだ。本来は人の行動を制限したり型にはめたりするものではないはずのルールに、隷属してしまう。けれど本当に優れたルールは、そこから人のクリエイティブな行為をデザインできる。私たちひとりひとりが、自分なりの確変型ルールのアルゴリズムを一つでも持ったら世界はきっと面白いほうに上振れすると思うのだ。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

森口哲平
◎Bチーム「ルール」担当。経営層のプレゼンサポート「Team CUE」をサービス化。企業の研究開発・事業部門向けにサービスデザインやプロトタイピングを行うチームを立ち上げる。

文=森口哲平 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN 5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

連載

電通Bチームの NEW CONCEPT採集

ForbesBrandVoice

人気記事