フォードとホンダ、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、BMWは29日、首都ワシントンの連邦控訴裁判所に共同で申し立てを行った。これに先だつブルームバーグやロイターの報道によると、申し立てでは、裁判所がトランプ政権の変更案を拒絶するなら最終的な規則について意見聴取を求めるものの、案自体には特定の立場をとらないとしている。
トランプ政権は3月、自動車メーカーに年約1.5%の燃費改善を義務づける新ルールを発表。燃費改善幅はオバマ政権時代に定められた年約5%からかなり緩められた。
これに対してカリフォルニア州は5月、トランプ政権による燃費基準の緩和を阻むべく訴訟を起こした。訴訟はほかに20数州が支持している。カリフォルニア州は、米国の自動車業界を2つの基準で「股裂き状態」にするリスクを冒してでも、オバマ政権時代の厳しい規則を引き続き実施する考えだ。
自動車業界では対応が二分している。ゼネラル・モーターズ(GM)やフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)、トヨタ自動車をはじめ、米国で事業を行うほとんどの自動車メーカーを代表する米自動車イノベーション協会(AAI)は、トランプ政権の基準を支持している。
一方、フォードとホンダ、VW、BMWの4社は昨年7月、カリフォルニア州との間で、トランプ政権の案よりはかなり厳しいものの、オバマ政権時代よりはやや緩い基準に自主的に従うことで合意。この動きは大統領を激怒させたとされ、4社は反トラスト(独占禁止)法違反の疑いで調査を受けることになった(調査はその後、取り下げられている)。
ハーバード大学法科大学院のケイトリン・マッコイは、カリフォルニア州などトランプ政権の規則変更に異議を申し立てている側は「4社が中立を保つのではなく、自分たちの側につくのを期待していたのではないか。そうなれば、より志の高い基準に従うことが実際に可能かどうかや、より高い基準に従う用意が業界側にある点について、法廷にメッセージを送るかたちになっていたからだ」とコメント。そのうえで「4社はカリフォルニア州との合意でそのメッセージを送っているので、この訴訟ではあえて申し立て側を支持しなくてもよいと判断したのかもしれない」と推測した。