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2020.06.30

マイクロソフト全直営店の閉鎖、複雑化する小売業界を予兆か

Photo by Peter Summers / Getty Images

マイクロソフトは先ごろ、世界各地にある直営の実店舗83カ所すべてを閉鎖すると発表した。これに伴い、2020年第2四半期(4~6月)に4億5000万ドル(約480億円)の費用を計上するという。これは、単なる店舗数の削減や、不採算事業の廃止という問題ではない。

同社は今後、米ワシントン州レドモンドの本社近くとニューヨーク、ロンドン、シドニーに店舗ではなく「エクスペリエンス・センター」を開設する計画だ。それが具体的にどのようなものになるのか、まだ明確には示されていない。だが、名称から想像できるのは、消費者にブランドや製品を紹介したり、展示したりするものではないということだ。

多くのブランドが今、まさにこうした変更について検討している。あちこちに数多くの店舗を持つのではなく、限られた場所に販売以外の目的を持った店を置こうとしている。

今求められるもの


ブランドも小売業者も、もう何年も「オムニチャネル」について議論してきた。効果的に販売するためには、流通チャネルを統合しなければならないと考えてきたのだ。

だが、いまや誰もが、それが間違っていたことを理解している。実店舗でもオンラインでも、顧客は同じ顧客だ。焦点を当てるべきものは、流通経路ではあり得ない。世界のどこであっても、顧客でなくてはならない。

そして、ブランドや小売店のトップの多くが考えているのは、数を減らした上で、今とは異なる店舗を持ちたいということだ。店舗は「消費者の認識を高め、啓発し、共有する価値観に基づき、自らのアイデンティティを定義し、関連性を築くためのものにしたい」などとされている。

このように考えられるのは、販売は店舗以外でもできるためだ。販売における店舗の重要性は低下している。商品はほぼ何でも、オンラインで売買できる。ライブストリーミングやビデオ通話、チャット、その他のテクノロジーのおかげで、店舗が閉まっていても買い物は可能だ。

新型コロナウイルスのパンデミックが収束した後、こうした新しい習慣がどれだけ定着するのか誰にもわからない。だが、完全に消えてしまうことはないだろう。店舗はこうした新しい環境に、適応していかなければならない。
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編集=木内涼子

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