コロナを経て花の需要に変化 「鉢物」の人気が高まる理由

花業界は、卒業式や送別会で需要が増す3月に新型コロナウイルスの直撃に遭いました。そして5月、最大の繁忙期である「母の日」のあるこの月を、今年は「母の月」として展開し、業界一丸となって乗り越えました。とはいえ、厳しい一面は続いています。

そんななか、青山フラワーマーケットは6月3日から全店営業再開となりました。久しぶりにお客さまと対面して直接花を届けられることは喜びであると共に、しばらくすると驚くような数字が出てきました。

9割が「家に花やグリーンを飾りたい」


コロナ禍後の需要の特徴として、鉢物とフラワーベース(花瓶)が大きな伸び率を見せているのです。鉢物は観葉植物を中心として、アジサイやクチナシといった季節の花鉢も売れており、一番好調な店舗では前年の6倍売れているところもあります。

フラワーベースも同様に、ほとんどの店舗で昨年以上に好調です。全店での売上は1.5倍ほど伸びていて、オリジナルのミニベースから、インテリアとして枝ものと合わせやすいシンプルな円筒ベース、個性があるインポートのものまで幅広く売れています。



私が理事を務めている花の国日本協議会でも、5月初旬に1000人を対象にアンケートを行うと、面白い調査結果が出ました。

「ご自宅で過ごす時間が長くなって以降、“花やグリーンを飾りたい”という心境になられましたか?」という問いに対し、65%の方が「以前に比べ、ものすごく花やグリーンを飾りたくなった」、25%の方が「以前に比べ、やや花やグリーンを飾りたくなった」と回答し、合算すると10人中9人が「花やグリーンを飾りたい」という気持ちが増しているということです。

これには自分の周りにも顕著に現れていて、久しぶりに経営者仲間で勉強会を開いた際に、「ベランダで植物を育て始めた」「庭にハーブや野菜苗を植えて楽しんでいる」という声が聞かれました。それまでは植物に全く興味がなかったことを知っているだけに、驚きました。

店に立ち寄っているときでも、大きな枝ものをさらりと手に取る男性や、大きなユリの束をラッピングもせずそのまま肩で抱えて颯爽と去る男性がいて、その光景に思わず、「ここはパリだったっけ?」と目を疑いたくなりました。



この連載のタイトル通り、「Living With Flowers Every Day」をコンセプトにこれまで取り組んできましたので、日常に花がある生活が感じられ、熱い想いが込み上げてきます。
次ページ > 自粛期間があったからこそ

文=井上英明

ForbesBrandVoice

人気記事