コロナを経て花の需要に変化 「鉢物」の人気が高まる理由


今までは、通勤途中にある公園の緑や街路樹など、日常生活の中で有機的なものを目にする機会が無意識にでもあったのだと思います。それが、長い自粛により、家の中に閉じこもり、定規で描いた様な直線やコンパスで描いた様な真ん丸に囲まれる生活になってしまいました。家に緑を求めるのが増えたのは、人間が生き物として、本能的に有機的な環境を求めている証拠であると感じています。

植物が、ヒトに存在意義を与えてくれる


近年、室内でペットを飼う人が増えています。これは癒やしを求めてのことは当然として、ペットと一緒に過ごすには、毎日食事や水を自分が責任を持って与える必要があり、そこには無意識に「自分がいないとこのペットは生きていけない。自分は必要とされているんだ」といった自分の存在意義を確かめたいという思考もあるように感じます。

そして、観葉植物の需要が伸びている理由は、その延長線上にあたるのではないかと思います。花も植物も水をあげなければ枯れます。肥料をあげたり、葉を摘み取るなど手間をかける必要があります。私たちは、ただビジュアルとして花や緑を置きたいだけでなく、手入れをする、責任を持つということで、自分の存在意義を感じたい生き物なのかもしれません。



実際に、20代男性が増えたという店舗の店長の話によると、一度目の来店では購入せず、何度か接客して説明をしたあと、大事そうに手のひらに抱えて「この植物をください」と購入に至るケースが何度も続いたそうです。モノとしてではなく、「生命あるものを飼う」という意識で購入する。そう考えると、この人間の本能に基づいた行動は、一時的なブームではなく、長きにわたって定着していくのではないかと感じています。

街を見渡すと、花を手にする人を以前より見かけるようになりました。これから続いていくアフターコロナの生活で、自分の気持ちを豊かにできるものは、人それぞれにあると思います。それが花や緑であるならば、そのお手伝いを精一杯していきたいと思います。

文=井上英明

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