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「パーソナルトレーナーをポケットに入れてもち歩く」をコンセプトに誕生した、音声ガイドによるヘルスケアコンテンツ/アプリ「BeatFit」。ヘルスケアに欠かせない筋トレやランニングなどに、カリスマトレーナーの声と気分がアガる音楽でバックアップし、適切でモチベーションの途切れない運動を可能にするものだ。

ジム通いがしにくくなった新型コロナウイルスの流行下でも、自宅で使用できることから、爆発的に会員数を増やしているというBeatFit。スマートフォンなどのテクノロジーをベースとした現代的なコンテンツビジネスの新潮流は、どのように誕生したのか、CEOの本田雄一に聞いた。


就職面接で「3年で辞めます」と独立宣言した生粋のシリアルアントレプレナー


「自分にとっては起業することはごく自然なことでした。25歳までに起業しようと決めていたので、大学時代の就職面接で、『3年で辞めて独立します』と言ったのも本当です」

1社目の不動産企業・リクルートコスモス(現・コスモスイニシア)に新卒入社後、2年半で起業し不動産サイト「福岡R不動産」の立ち上げや、シェアスペース運営などを成功させた後、新たな可能性を広げるために渡米。ニューヨーク⼤学経営⼤学院にてMBAを得て、帰国する。

その2年間の米国生活のなかで、米国のフィットネス文化に刺激を受けたことによって、事業の方向性が決まったという。

「日本のような国民皆保険が存在しない米国では、自分の健康管理を行うことは当然です。ところが日本ではスポーツジムやフィットネス文化はずっと馴染みの少ないものでした。ここ5年程でRIZAPの隆盛などでパーソナルトレーニングに注目が集まってきましたが、料金が高価であること、日時や場所の制限などの問題があり、まだまだ一般的な普及にまでは至っていません。

だとしたら、カリスマ・パーソナルトレーナーによる音声のみのコンテンツで低価格を実現し、スマートフォンなどの活用で、日時場所の制限なくフィットネスを行えるようにしたらよいのではないか。それがBeatFitというビジネスの種だったのです」

それがいま、新型コロナウイルス拡大によるスポーツジムの営業自粛、オンラインフィットネスへの関心の高まりにより、大きく脚光を浴びている。対面を必要としないBeatFitの需要はこれからますます増大していくだろう。

もともと自分の小さな体格にコンプレックスを抱いていた本田は、「もっと大きくなりたい」と自己流のトレーニングを続けていた。しかし十分な効果が得られず、パーソナルトレーナーの門を叩くことで理想の体を手に入れることができたという実体験があった。

「高齢化社会を迎え、深刻になっている健康維持の問題もBeatFitで運動を習慣化すれば解決は可能です。習慣として続けるのはなかなか難しいものです。体に負担を強いるフィットネスであれば、なおさらだと思います。そこを継続させるためのヒントを、私は自身のトレーニングやニューヨークのフィットネスクラブ、スタートアップを通して見つけることができました」




ニューヨークのフィットネスの現場を体験したからこそ、気づいた音楽の力


「スポーツジムに行ったとしても、マシンを使いながらジムに流れているテレビをぼんやりと眺めているという光景は珍しくありません。そうしただらだらとしたトレーニングでは、もちろん目覚ましい効果は望めません。そのうちに飽きてしまい、ジムにさえ通わなくなってしまうでしょう。

BeatFitユーザーの3割は、実はスポーツジムでイヤホンをして活用しています。退屈になりがちなマシントレーニングも、コンテンツ内のトレーナーの声がモチベーションを高めてくれるので、継続しやすくなるのです。

トレーナーの声にプラスするもうひとつの決め手は音楽です。ニューヨークのジムでは、運動に適した音楽によってモチベーションを高めており、そこに楽しさにつなげる秘訣がありました。BeatFitはより高品質なユーザー体験を実現するために、フリー音源は使用せず、音楽レーベルとライセンス契約し、耳馴染みのある洋楽ヒットナンバーなど1万曲を使用可能にしました」

さらに番組コンテンツは、トレーニング負荷のピークに音楽のサビの部分がシンクロするように細かく調整しているというから、徹底している。

しかし、YouTubeの爆発的な普及など、現代は動画の時代でもある。そのなかで、なぜ音声コンテンツという道を選んだのだろうか。

「トレーニングの最中に動画を見ながらというのは、実はかえって不便なのです。常にモニターが見える角度でいなくてはならないことから、動きが制限されてしまう。さらにランニングなどの移動するメニューは、事実上不可能ですから」

音声コンテンツであるメリットはほかにも、動画コンテンツに比べて素早い番組更新が可能であり、多彩なトレーニングメニューを追加できるというスピード感がある。

それにより、ユーザーを飽きさせないことができるというのだ。つまり継続のための刺激を途切れさせないという方策を取るための「音声」だというのだ。ただ将来的には要所要所で動きの分かりにくいエクササイズに関しては動きを確認できる動画の提供も行っているという。

いまではBeatFitは、個人だけでなく、法人にも福利厚生のひとつとして活用されるようになった。

「2年前のサービスローンチは個人向けとしてのスタートでした。しかし今年からは法人向けにもサービスを開始しました。というのも健康経営が叫ばれているなか、出張トレーニングやセミナーなどを行っている企業は多いのですが、どうしても日々の習慣化や若い世代の参加率が低いという課題があるからです。

導入企業様には、BeatFitの場所を選ばず、老若男女問わず好きなメニューを選んで、好きな音楽とともにエクササイズを行うという特徴が反響を呼び、社内に習慣が生まれたと、非常に喜ばれています。何より費用対効果が高くどんな社員も参加しやすいところが好評です」

外部のプロフェッショナルを活用するために気を付けなくてはならないこと


BeatFitを成功に導くために本田は、技術的にも大きくこだわったという。

「トレーナーの声がかき消されない音楽のベストなバランスは、外部サウンドエンジニアとともに、徹底的にこだわりました。心地よい音質もまた、快適なトレーニングの士気を高めますから、同じように試行錯誤を重ねました」

サービス開始当初は、ユーザーの活用動向をデータとして採取するためにデータ分析の専門家に依頼し、アプリ制作もまた、プロフェッショナルに依頼することで、クオリティーを担保したという。

「そもそも立ち上げたばかりのスタートアップのもっているリソースは限りなく少ないのが一般的ですから、自社の範疇に収められるはずがありません。当然、積極的に外部のプロフェッショナルを活用することになるはずです」

本田は外部のプロフェッショナルの活用が事業をグロースするスピードに大きく関わってくるという。

「何を外部に依頼し、何を内部で行うかというのを、私はコアであるか、そうでないかに切り分けています。自社のコア・コンピタンスを形づくる業務は、最初は外部を活用しても、早い段階で内製化したほうが、リスクが下がります。

一方、社内ICT構築やセキュリティなどは、社内リソースがない場合なるべく早いうちに専門技術をもったITアドバイザーなどのプロフェッショナルの手に委ねたほうがよいと思います。ICTは業務の生産性を大きく左右しますし、セキュリティーの担保は信用問題につながります。しかしそれぞれの業務に対するリテラシーを社内で用意するとなると、時間と人員が負担になってしまいます。

小規模だったらなおさら、コアでない業務に関しては社内リソースをなるべく割くべきではありません。社内リソースを自分たちにしか実現できない中核事業にすべて振り当てることでしか、スタートアップはグロースのスピードを最大化できません。考えるべきは、中核事業が成功しなければ、それらの付随業務自体がすべて不必要になってしまうということでしょう」



社会課題の数だけ、起業の種はある


最後に、高齢化を迎えた日本の抱える人生100年時代の健康管理を、音声コンテンツによって実現しようとしている本田に、若い起業家へのメッセージをもらった。「まだまだ自分は挑戦者なのですが」と前置きしながら、彼は語り出す。

「フィットネスとテックを掛け合わせて、どんな課題を解決できるかを模索した結果がBeatFitです。世の中にはまだまだ課題が山積みだと思います。その全てが起業の種だと思うのです。

解決するためにはもちろん、テクノロジーの力が重要です。10年前には不可能だったことにも、技術やデバイスの進化によって新たな解決策が生まれています。BearFitなら、さらなるパーソナライズという課題があります。しかしAIをもっと活用して、より個人個人にあったコンテンツへと成長させることは、近い将来に実現できるでしょう。

起業に関してリスクの問題をよく聞かれますが、それは、感じるか、感じないかではないでしょうか。自分の場合は何よりも、0から1を生むワクワクが大好きなので、リスクよりもそちらに心がいってしまいます。

自分のアイデアが、人や社会から評価され、お金を払う価値があると認められる瞬間こそが快感です。無限のチャンスは私にも皆さんにも開かれているはずなので、勇気をもってチャレンジしてください」


本田 雄一(ほんだ・ゆういち)◎⼤学卒業後、リクルートコスモス⼊社。2007年DMXを設⽴し、不動産サイト「福岡R不動産」を立ち上げた。その後、渡米。17年ニューヨーク⼤学経営⼤学院にてMBA取得。18年にBeatFitを共同創業し、代表取締役CEOに就任。

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