また、事業主からすると、DX化によって、単価がどれだけ上げられるようになるのか、どれだけリピート率あるいは継続率を伸ばせるのか、その結果としてLTVがどれだけ伸びるのか、一方でコストがどれだけ下がり、これらによってどれだけ利益が増えるのかといった収益性改善の観点は無視できません。
「AIを導入します」と言って多額の投資をしようと思っても、データがまだ紙ベースでデジタル化されていないとか、あるいは実は人力で対応したほうが質も高いしコストも安い、ということもあろうかと思いますが、それならAIにこだわる必要ないはずです。技術はあくまでも手段なので、付加価値にしっかり意識をフォーカスするのが大事ではないでしょうか。
美濃部:どちらも大事ですね。事業者は、手段を目的にしないということが大事だと思います。結局は顧客価値最大化にどうつなげるかのためのDXです。例えば事業観点でコスト削減ができるという点も、最終的にそれを顧客に還元できると思います。
我々が取り組んでいるMakuakeで先行予約を開始した栄養検査キット「VitaNote Quick」はその点、顧客に対しコスト面でも手軽に検査できる様、チャレンジしました。500円で2回分の検査をしていただけるんです。
野本:はい、気軽だと思います。価格にも驚きました。
顧客価値について徹底的に考える
美濃部:野本さんのおっしゃるユーザーに対しての付加価値とは、例えばレコメンドだったりパーソナライズだったり、顧客のデータを持っているからこその付加価値という様なイメージですか?
野本:そうですね。もちろんレコメンドやパーソナライズも付加価値であり得るんですが、例えばパーソナライズが本当に顧客にとって価値なのかどうか、逆から見ると、パーソナライズが本当にその商品のKey Buying Factorなのか、という議論はあると思っています。
これは商品によりけりだと思います。意味のあるパーソナライズはするべき。一方で、例えば消費財でも、顧客が実は機能ではなく「ブランド」や「イメージ」を買っている場合、パーソナライズは求められていない可能性があります。その場合には品質向上やブランディングにリソースを回したほうがいいこともありますよね。
美濃部:まさにおっしゃる通りだと思います。手段が目的化してはいけないですよね。我々は栄養検査キットに加えて、検査データからサプリメントのパーソナライズも実施しています。栄養は不足が問題になるのはもちろんですが、特定の栄養素単位では量が多すぎると過剰摂取が問題になることもあります。既に足りている栄養素も含めてサプリメントを出してしまうと、特定の種類だけ過剰にとれ、バランスが崩れてしまうということは大いにあり得ます。
そうした観点から、栄養改善とパーソナライズの組み合わせは非常に相性がいいと考えています。それをすることでより、ユーザーの健康に貢献できると思っています。
野本:そうですね。そういう意味でいうと、商品のKey Buying Factor はユーザーのセグメントによりけりなので、誰がコアなユーザーかという切り口でペルソナを具体的に特定するという観点は大事ですよね。Vitanoteでいうと、栄養改善をすることでQOLにインパクトがある人ってどういう人かとういうペルソナを具体的に定義したいですね。これはDXに限らず、事業開発全てに当てはまることかもしれません。
グロービス・キャピタル・パートナーズの野本遼平氏