「河井がやっていたことはKGBと同じだから」
KGBとはご存知の通り、旧ソ連の国家保安委員会。西側諸国で諜報活動をしていたことで知られる。では、河井前法相はなぜKGBと揶揄されるのだろうか。
1996年の総選挙で初当選した当時、河井前法相は目立たない政治家だった。政治家になったのに政策に関心がなく、存在感は薄い。法案づくりや政策論議で活躍することもないのに、その後、異例の抜擢で首相補佐官に就任。しかし、知人の国会議員にこんな頼みごとをしている。
「自分が何をしているのか、地元の支持者に教えてやってほしい」。
そこでこの知人の議員が広島の会場に行ってみると、地元選出の国会議員は誰もいなかったという。会場では、河井前法相が首相補佐官として外遊した際などに撮影した、海外の要人との写真を集めたパンフレットが用意されていた。要人と何を語ったのか、外遊や会談についての説明はなかった。
では、そんな政治家がなぜ出世できたのか。ここにKGBと揶揄される理由が関係する。
河井前法相がはっきり変身したのは、故鳩山邦夫元総務相への接近がきっかけだったという。鳩山氏は説明するまでもなく、国会議員のなかでナンバーワンの資産家である。
河井前法相は鳩山氏が主宰する政治集団「きさらぎ会」の中心メンバーになった。一方の鳩山氏は2010年から12年にかけ、離党した自民党への再々復帰を狙っていた。河井前法相はそんな鳩山氏を助けながら、同氏の豊富な資金力の恩恵に浴していたという。
鳩山氏は年に2度ほど、きさらぎ会メンバーを事務所に呼んで、餅代や氷代として政治資金を支援していた。その時、必ずと言っていいほど、河井前法相が同席していたという。関係筋は、「みなカネのにおいがする方向に引き寄せられる。河井はその力をうまく利用していた」と語る。
そして、きさらぎ会は徐々に安倍応援団の性格を強くしていった。河井前法相はこの会合をテコに、安倍晋三首相や菅義偉官房長官に接近。両氏も、きさらぎ会の会合に顔を出したことがある。
そして、河井前法相が安倍首相や菅官房長官に接近するために使ったもう一つの手段があった。彼を知る議員は、「河井がやっていたことはKGBと同じだった。政治家や官僚、マスコミの間で安倍や菅の悪口を言っている奴がいると、それをご注進することで、権力に近づいた」と語る。
つまり、陰口を密告すること。権力者は誰が自分の批判をしているかを気にしたがるものである。彼はそこを巧みに利用して、安倍首相・菅官房長官に取り入り、重宝されるようになった。彼が現れると、国会議員たちがすーっとその場を離れるのも、何を密告されるかわからないため、首相の側近となった彼を恐れていたのだ。