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Photo by Alexi Rosenfeld/Getty Images

米国では今年3月12日、トイレットペーパーの売上高が前年同日比で700%以上増加したという。米調査会社ニールセンによれば、その後5月2日までの9週間の売上高は、前年の同時期より約71%増加していた。

新型コロナウイルスの感染拡大がパンデミックの状態になってから4カ月余りが経過した現在も、「パニック買いをやめるように」との当局の呼び掛けにもかかわらず、トイレットペーパーは相変わらず品薄の状態が続いている。さらに、清掃用品や手指消毒剤などにも同じことがいえる。

だが、なぜ主に「パニック買い」されるのは、トイレットペーパーなのだろうか? 専門家によれば、この行動の背景にはメディアによる誇張のほか、私たちの恐怖心があるようだ。

英アングリア・ラスキン大学のキャサリン・ジャンソン・ボイド博士(消費者心理学)はBBCに対し、人は不安を感じるとき、「自分が事態を掌握できていると思えるようにするために、何か実際に役に立つことをする必要がある」と説明している。

また、仲間からのプレッシャーが強く影響しているとの見方もある。オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学ビジネススクールのニティカ・ガーグ准教授(マーケティング学)は、私たちは「この人が買うなら、隣人が買うなら、そうする理由があるに違いない。私もそうしなくては」と考えるのだと指摘する。

一方、米科学誌プロスワン(PLOS ONE)には先ごろ、これらとはまた別の要因、私たちの「性格」に着目した研究結果が掲載された。

研究チームはまず、35カ国の成人1029人に性格検査(HEXACOパーソナリティー・インベントリ)を受けてもらった。この検査では、性格を6つの要素(正直さ/謙虚さ、外向性、情動性、同調性、誠実性、経験に対する開放性)で分類する。

さらにチームは、回答者の人口統計学的データや、新型コロナウイルスに対する恐怖心、感染対策のための行動、トイレットペーパーの消費などに関するデータを収集・分析した。

研究結果から明らかになったのは、「情動性」と「誠実さ」のスコアが高い人ほど、トイレットペーパーをパニック買いする傾向があるということだ。

情動性のスコアが高い人は、日常のストレスへの反応として、恐怖や不安を感じやすいと考えらえる。つまり、彼らは新型コロナウイルスへの恐怖心が強く、それがパニック買いの引き金となっている可能性がある。

また、誠実性のスコアが高い人にも、トイレットペーパーを買い込む傾向がみられた。HEXACOの説明によれば、こうした人たちは時間をきちんと管理し、物理的な環境を整えておきたいだけでなく、慎重に考えた上で決断を下す傾向がある。つまり、トイレットペーパーについても先々の必要性を考慮し、計画的に購入しておこうとする。

そのほか研究結果は、若い人たちより高齢者が、欧州の人たちより米国人の方が、トイレットペーパーを備蓄しておく可能性が高いことを示している。

論文の著者らは、「この(パニック買いの)現象に関する総合的な理解は、まだまだ得られていない」とする一方、結果は当局の広報活動における戦略の立案に役立つはずだとして、次のように述べている。

「パンデミックの重大性を伝え、ソーシャルディスタンスの確保など必要な措置を講じてほしいと訴えることは重要だ。だが、買いだめなど社会秩序を乱す行動につながるパニックを防ぐためには、発信する側が慎重に行動する必要がある」

「これらの結果が明確に示すのは、当局が人々の不安感を認識するとともに、統制は失われていないと伝えることの重要性だ」

編集=上田裕資

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