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2020.07.06

高層ビル建設ラッシュ後に金融危機 今回もこの法則は当てはまるのか?

Photo by Dimitry Anikin on Unsplash


ニューヨークのマンハッタンでは、この間、世界一を競うような高層ビルこそないが、さまざまな建築家の設計による高層ビルがいまも建設中である。リーマンショックの際に、アメリカが他国に貸し付けたドルは、アメリカ国債を買うことを条件に貸し付けられ、その後に国内へと還流してきた。

加えて、FRB(連邦準備制度理事会)が、量的金融緩和政策のQE3まででバラまいたお金が余り、ブルマーケットが史上最長となっていた。その余ったお金が不動産市場にも流れ込み、今回の建設ラッシュとなっていたのだ。

マンハッタンに摩天楼が多い理由


JFK空港や、ラガーディア空港からも見えるマンハッタンの新たな高層ビル群は、セントラルパークの南に集中していて、57丁目界隈に多い。新しいビルが8本立ち並び、ビリオンネア・ロー(通り)とも呼ばれるが、友人の不動産ブローカーに言わせると、そこに立ち並ぶビルは細すぎて、強風が吹くと多少の揺れを感じる物件もあるので、これを気にする人にはお奨めできないという。

その1つが、高さが425.5mある「432 パークアベニュー」だ。56丁目と57丁目の間にあるコンドミニアムで、2015年に完成した当時は、アメリカで3番目に高いビルで、住居ビルとしては世界でいちばんの高さを誇っていた。


432 パークアベニュー(Yana Paskova/For The Washington Post via Getty Images)

しかし、2020年時点では、早くもアメリカで6番目の高さに後退し、いまでは市内でも高さは5番目、住居ビルとしても世界で3番目となっている。私も知人の紹介で内覧に行ったが、1フロアが約732平方メートル(221坪)で、最上階に近いフロアは90億円で売りに出されていた。

高さが634mある東京スカイツリーには及ばないが、JFK空港もラガーディア空港も眼下に見下ろせ、発着する飛行機がおもちゃのように見え、ヘリコプターも窓のはるか下を飛び回っていた。高さ400mにあるガラス張りの空中の住居からの眺めは、まるでSFの世界のようで、そこに住むという実感はどうしても持てなかった。

マンハッタンは固い岩盤の島であり、地震もない。太古の大陸移動の前にまで遡ると、いまのアフリカの西サハラの少し沖合にあったらしい。その有利な条件のため、昔から摩天楼が立ち並び、いまは高さがどんどん伸びるあまり、細身の高層ビルが耐震を余り考えないまま、どんどん空へと伸びている。

昨年も、株価の最高値更新のニュースが続くなか、高層ビルが盛んに建設されていて、手頃で美味しいチャーハンを出していた中華料理店があったエリアや、よく通った弁当屋があった懐かしい地区も、すべてこの10年で新築ビルに変わってしまった。

正直なところ、こんなに建設ラッシュが続いてだいじょうぶなのかと不安にはなっていた。そこに、コロナ禍による積み木が崩れるような株安と景気の落ち込みだ。高層ビルの建設ラッシュとその後に続く金融市場のクラッシュ。今回もその「法則」は生きているのかと、私も戦々恐々とその推移を見つめている。

文=高橋愛一郎

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