戻り率の大きいトンチン型年金
終身年金保険というのは、払った保険料を、決めた年齢から生きている限り一生涯受け取るという仕組みの保険だ。この低金利の下では、魅力的な戻り率(払った保険料総額に対する受け取る年金累計額の割合)の終身年金保険は残念ながら存在しないが、強いて挙げればトンチン型年金なら、ほどほどの戻り率のプランもある。
トンチン型年金は、解約返戻金を少なくする代わりに、生きている人の年金に回すしくみで、この名称は17世紀にフランスのルイ14世にこの仕組みを提案したイタリアの銀行家ロレンツォ・トンティに由来している。
たとえば、太陽生命の終身年金保険「長寿生存年金保険」の例では、50歳から70歳までコツコツ保険料を払っているときの解約返戻金は少なくなるが、70歳から年金を受け取り始めると、男性は88歳、女性は94歳になると、払った保険料より受け取る年金額が多くなる。
以後は、生きている限りずっと受け取り続け、返戻率も上がっていく。99歳まで生きれば、返戻率は、男性が約165.5%、女性は約122.8%となる計算だ。
戻り率とは別に、保険料を支払っている間は、個人年金保険料控除が受けられるメリットもある。たとえば、所得税率20%の人であれば、最大4万円×20%=8000円の所得税負担を毎年減らせる効果がある。ちなみに、コツコツと保険料を払うのが苦手な人の場合、退職金で一括払いする人もいる。
出所:太陽生命パンフレット
こうした商品性を見たとき、「平均年齢まで生きてもモトが取れないから損」と考える人もいるが、そう思うなら、もちろん無理に利用する必要はない。
ただ、保険の本質は、もしものときに貯蓄ではまかなえない事態に備えるためのものだ。若い人が「もしも想定外に早く亡くなったときに備えたい」と思って「生命保険」に入るように、熟年の人が「もしも想定外に長く生きてしまったときに備えたい」と思って「終身年金保険」に入るなら、それはそれで理にかなっている。
平均年齢までの老後資金はiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などでしっかり備え、それより長生きした場合には保険(トンチン型年金)で備えるのが合理的かもしれない。
そういえば、先日、FP相談に訪れた元会社経営者の男性は、大きな額でトンチン型年金に入るつもりだと言っていた。生活資金の予算取りに使うという。どういうことかというと、全財産のうち、生きているときのフローのお金をトンチン型年金からのお金でほぼ確定できるので、家族に遺す財産にブレがないのだそうだ。そんな考え方もある。
連載:ニュースから見る“保険”の風
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