予想以上の長生きでお金が尽きた そんな事態に陥らないためにいまからしておくべきこと

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「まさか、人生の最後になってお金が足りなくなるなんて……」そんなつらい思いをする人たちが増えている。それも、高齢者向け有料老人ホームの入居者に。

しっかり老後を見据えてホームに入居したものの、気がつけば利用期間が長期となり、資金的な問題で退居せざるを得ない人が増えているのだ。

子育て時期を終えて夫婦2人だけになると、つい、ありあわせもので済ませる食事になりがちだが、ホームに入ると、管理栄養士がプロデュースする栄養バランスの取れた食事を1日3回きっちりと食べる生活になる。

ホームでは食事時間もほぼ決まっているから、自然と睡眠時間などの生活リズムも規則正しくなる。空調の効いた、健康管理も行き届いた快適な環境で過ごした結果、元気に過ごし、当初の予定より長生きすることになってもおかしくはない。

長生きするのは、本来なら喜ぶべきことだ。しかし、想定外に長くホームにいることになり、結果、お金が底をついてしまったら、そのまま居続けるわけにはいかなくなる。しかし、退去となると、家を処分したうえでホームに入っていれば戻る先もなく、少しグレードが下がる入居先を探して、新たな環境に身を置くことになる。

「家族に迷惑をかけたくないから」「専門的な介護が受けられるから」「緊急時の対応の面で安心だから」「1人暮らしは心配だから」といった理由からホームに入居したものの、思いのほか健康に毎日を送ることになったばかりに、最後の最後でお金の計算が狂うのは、なんともやりきれない。

平均寿命と平均余命の違いに注目


このようなことは対岸の火事ではなく、かなり高い確率で誰にでも起こりえることだ。というのは、老後資金のFP相談の際に、何歳までのシミュレーションを希望するかと聞くと、たいていの人が「平均寿命まで」と答えるからだ。

平均寿命といえば、少し前までは「人生70年」「人生80年」と言われたが、いまの40~50代の人たちが80~90代になったときには、「人生90年」「人生100年」が当たり前になっている可能性はかなり高い。

だから、現在の平均寿命を基に老後資金を考えていると、いざ老後になってみたら思っていたより足りないという事態になるのもうなずける。


2015年までは厚生労働省「簡易生命表」、2050年は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」の死亡中位による推計結果。小数点第2位以下を切り捨てて表示
出所:太陽生命パンフレット

加えて、「平均寿命」という数字への誤解もある。平均寿命は、0歳のときに何歳まで生きられるかを統計的に予測した「平均余命」のことだ。

たとえば、いまの平均寿命(0歳の平均余命)は、男性81歳、女性約87歳だ。しかし、60歳の人の平均余命は、男性約24年、女性約29年で、平均寿命より2~3年は長く生きると予想される。

70歳の平均余命では、男性約16年、女性約20年となり、平均寿命より3~5年長く見積もる必要がある。80歳まで生きてきた人は、平均余命が男性約9年、女性約12年のため、平均寿命より5~8年長くなるといった具合に、平均寿命とどんどん乖離してくる。
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文=竹下さくら

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