国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

「バサースト1000km」耐久レースに参戦したGT-R R32

せっかく電気自動車リーフやeパワーで注目されていたのに、突然のカルロス・ゴーン氏騒動、コロナ禍と続き、いまの日産には逆風が吹いている。しかし、30年前の日産は、世界が羨む名車を生み出していた。

1989年に日産スカイラインGT-RのR32仕様が発表された時、自動車業界に革命が起きた。オーストラリアでは「ゴジラ」と呼ばれ、レース界を圧倒し、英国では「世界一優れたスポーツカー」と絶賛された。その通り、GT-Rは当時、世界で一番技術的に進化したスポーツカーだった。

レースカーをベースにした市販車のツインターボの直6エンジン、秀逸の4WDと後輪ステアリング、世界一のコーナリング性能は話題を呼び、伝説になった。それは、映画「ワイルド・スピード」やゲーム「グランツーリスモ」によってさらに拡張されている。

あまりの強さに大会から締め出される


1989年当時、R32仕様ほど国内外でリスペクトされた日本車はなかった。輸出されなかった(注:豪州には100台だけ輸出)国内専用車だったにも関わらず、その性能やレース結果は、各国のメディアで報じられ、その名は瞬く間に知れ渡った。

日本のレース「グループA選手権」で闘うために誕生したGT-Rは、1990年から4連覇でチャンピオンシップを獲得した。その後、海外のレースにも参戦するようになり、オーストラリア東部で開催され、過酷なレースとして知られる「バサースト1000km」耐久レースでは2年連続で優勝を飾った。すると、地元のモータースポーツ運営者達は、あまりに強いGT-Rを閉め出すためにルールを変更して、ターボ・エンジン車を出場できなくしてしまった。

ついに試乗にこぎ着けた海外のメディアのリポートはみな、驚くべきGT-Rのシャーシ剛性とコーナリング性能を褒めたたえた。英国の有力自動車番組「トップギア」の司会だったジェレミー・クラークソンはこう語っている。

「GT-Rのシャーシ剛性ときたら、まさにレース用だ。市販車の6気筒エンジンは280馬力を発揮する。でも、それは発表されたメーカーの数字だ。実際のオーナー達はチップ(ECU)を取り換えて400馬力以上出せるようにしている。驚くだろう? でも実は、800馬力までアップしているオーナーもいるそうだ。GT-Rのシャーシはこれだけのパワーに耐えられるからね。コーナリング性能はどのライバルよりも凄い。ハンドリングは、世界一と言われていたポルシェ959より素晴らしい。GT-Rは物理法則を完全に覆すんだ」

文=ピーター・ライオン

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