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一般的に「ダイバーシティ(多様性)」は、性別、国籍、性的指向、障害の有無にかかわらず多様な人が差別なく働けることを目指す。「インクルージョン(包括的)」では、そうした多様な人たちがそれぞれの持ち味を生かして働き、意思決定に関わることで企業に新たな価値をもたらすことを指す。
米国企業では、ダイバーシティ推進にとどまらず、インクルージョンに重点をおくことが主流である。さらにこのD&Iに、もうひとつの視点が加わりつつある。
それはイクオリティ(公平性)である。昇進、賃金などの公平性を目指すものだ。ドロップボックスではこの点を強調するために、D&Iといわず「DEI」、すなわちDiversity(多様性)、Equity(平等性)、Inclusion(包括性)を目指すと掲げる。
同社では評価にあたって、同じ階層の社員をどう評価したかについて、マネジャーが集まりピアレビューを行う。ここで男女差がないかもチェックされ、場合によっては評価の修正が行われる。評価者の取り組みを人事部が見ており、マネジャーの査定にも反映するという。
アマゾンでも、「ダイバーシティだけじゃない」としてDEIを推進する。ジェフ・ベゾス自身もその重要性について次のように語っているという。「アマゾンは多様なバックグラウンドやアイデア、視点を持った、ビルダー(会社を築く人)たちがつくりあげている会社です。こうした多様性は、すべてのお客様に代わって発明を行うためには不可欠です」
ここ数年は、先行する欧州の動きも受けて男女の賃金格差がないかを確認する企業も増えている。HPでは、同じ仕事なら同じ賃金か、性別、人種など属性ごとで毎年チェックをしている。エヌビディアは外部の調査機関に賃金公平性の確認を依頼する。性別、仕事レベル、学歴、業績など75以上の項目を挙げて賃金公平性を測り、4年かけて平等を実現したという。
D&IからDEIへ。多様な人材を包括できる組織づくりにとどまらず、公平性の担保まで。一歩先をいくシリコンバレー企業の取り組みは日本の企業にとってヒントに満ちている。
※本稿は、野村浩子『女性リーダーが生まれるとき 「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成』(光文社新書)の一部を再編集したものです。