「ダイバーシティ」では足りない。アマゾンも推進する「DEI」とAIの活用

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日本は153カ国中120位──。2021年3月30日に世界経済フォーラムから発表されたジェンダー・ギャップ指数での順位だ。G7ではダントツの最下位であり、他の先進諸国に大きく遅れをとった。しかし日本に勝る各国でも未だジェンダー・バイアスは根強く、米シリコンバレーのIT企業における女性比率は、エンジニアで2割、リーダーでは1割から3割程度だという。十分とはいえない現状を打破するための各社の取り組みを調査し、「アンコンシャス・バイアス」の世界的な流れを追う。


AIを活用したアンコンシャス・バイアス対策


ここ数年、先進諸国の人事の間で関心の高まるアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)。エンジニアといえば男性向きである、女性は力強いリーダーに向かないといった無意識のうちのバイアスに気づき、差別につながるバイアスを取り除こうという動きである。

ドロップボックスでは、これまでマネジャー必須としてアンコンシャス・バイアス研修を実施してきた。2020年からは全社員を対象にする予定だという。ハラスメントにつながるバイアスを取り除くために、今後はヘッドセットを使ったVRでのロールプレイング研修も予定している。

さらに採用でもIT企業らしい取り組みをする。人材募集の案内文がジェンダーや少数派に配慮した記述になっているか、差別的な表現はないか、TEXIOというソフトウエアでチェックしている。

エヌビディアもまた人材募集の案内文をAIでチェックして性差に配慮をすることで、女性の応募者を6%増やすことができたという。同社では毎年35万通届く応募書類のチェックのためにもAIツールを独自に開発した。欲しい人材と合致しているかを確認するという。

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AIが絞った書類に、今度はマネジャーが目を通して、その後電話インタビュー、直接面談へと進む。この過程で女性比率を確認したところ、面接に進む女性比率が低いことがわかった。そこで女性対象のセミナーを開き、ここで集めた応募書類を必ずマネジャーが確認する仕組みとして、面接の男女比を同等にすることができたという。

むろんAIは万能ではない。それどころかAIがアンコンシャス・バイアスを助長する恐れもある。数年前にアマゾンが採用AIシステムを開発する過程で、AIが女性エンジニアの比率を抑える選抜をすることがわかり導入を見送ったことがある。

AIは過去の採用データから学ぶ。そこでジェンダー・バイアスのかかった動きをしてしまったのだ。こうした事例を踏まえて、シリコンバレーでも人事での活用には慎重な企業もある。

D&IからDEIへ


ところで今多くのシリコンバレー企業は、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のどの段階にあるのか。
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