日本では、2020年2月後半にネットフリックスで配信されると、徐々にブームに火がつき、「不時着ロス」という言葉まで流行した。約4カ月たっても、日本でのネットフリックス人気ランキングTop10の1位の座を譲っていない。韓国のメディア、スカイデイリーによると最終回の最高視聴率は21.7%にまで及んだ。これは韓国のtvNドラマ史上、最高記録だったという。
その人気は日本や韓国だけでなく、世界にまで及ぶ。筆者自身SNSを開くと、この作品の素晴らしさを語る投稿を、今でさえ何度も目にする。筆者が通うビジネススクールでは、オンライン授業の雑談の間でも、外国人の教授たちがこのドラマについて嬉しそうに語っていたほどだ。その人気ぶりには圧倒される。
2002年に放送された「冬のソナタ」から始まり、近年は「トッケビ」など、韓国ドラマは長くから日本人に親しまれてきたが、なぜ「愛の不時着」はこれまで以上に多くの人々を熱狂させたのだろうか。ヒットの裏側を探ると、北朝鮮のリアリティを追求した制作陣の熱意が伝わってくる。
脱北者たちに協力を求めた、リアリティの秘密
これまではメディアを通して、北朝鮮のトップや平壌の一部をうかがい知ることはできても、一般家庭や郊外の様子に触れる機会はあまりなかったのではないだろうか。高い評価の理由は、俳優陣たちの名演技以外にも、本来知ることが難しいリアルな北朝鮮の姿を、垣間見ることができた点も関連していると思われる。韓国に住む脱北者たちも、過去の北朝鮮に関する作品の中で、「最も現実に近しく再現されているドラマだ」と評価しているほどだ。
実はこのドラマの制作グループには、ストーリーや背景全体を再現するために「諮問委員」というものが存在する。ここでいう諮問委員は、脱北者たちのことだ。北朝鮮で生まれかつてはその地で暮らしていたが、経済難や政治的な理由で海外に逃げた人たちである。計14人の脱北者たちの名前が、ドラマのエンディングで紹介されているのを見ると、彼ら彼女らが本ドラマ制作に欠かせない存在だったことがわかる。