「 #愛の不時着 」なぜ爆発的ヒット? 北朝鮮出身者も協力した制作の舞台裏

大ヒットの韓国ドラマ「愛の不時着」。韓国の財閥令嬢役のソン・イェジン(左)と北朝鮮の軍人役のヒョンビン (Netflix公式サイトより)


そんな中、韓国メディア「ノーカットニュース」は5月、韓国の国家行政機関である「統一部」が、本ドラマ作家パク・ジウンを「今年の統一人物」に選定したことを報じた。統一部は「『愛の不時着』は北朝鮮の文化を間接的に体験できるような作品であり、統一教育に肯定的な影響を及ぼした。ドラマの再現度が高いと専門家たちから称賛を得たほか、北朝鮮の文化と方言に親近感をもたらし、韓国人たちの北朝鮮に対する理解を深めることに貢献した」と作家パクを評価した。
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この選定を受け、パクは次のように制作経緯についてこう語った。

「約10年前に、ある女優がレジャー用ボートを乗っていると、気象悪化で北朝鮮に流されたという記事を見ました。その記事を見て真っ先に思ったことが『北朝鮮はそんなに近くに存在するの?』でした。そこから実際の距離を検索したりするなど、小さな関心がどんどん大きくなり、たくさんの資料を読むほどまでになりました。北朝鮮に住む人たちのことが気になり、最終的に『愛の不時着』というドラマ制作にたどり着きました」

さらに彼女は、世界中の視聴者たちがドラマ終了後に朝鮮半島の統一を願う声をインターネット上で見つけ、「セリとジョンヒョクの完全なるハッピーエンディングと統一を願います。そのために、私ができることに最善を尽くしていきたいと思います」とコメントした。パクの自国が抱える社会課題を、真摯に向き合い、発展を願って行動する姿は、まさに「今年の統一人物」にふさわしいと言えるだろう。
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作家の領域を超えた、責任感と使命感


「愛の不時着」大ヒットは、ただ凝ったシナリオの恋愛ドラマだからではなく、制作グループたちの強い想いが詰まった作品だったがゆえ、成し得た快挙ではないだろうか。ドラマで、セリに憎らしい言葉をかけながらも愛らしい軍人ピョ・チスを演じたヤン・ギョンウォンは、パクが統一部から受けた評価に対し、祝福のメッセージを感想とともに送った。

「我々にとって近くて遠すぎる北朝鮮がテーマでしたが、パクさんは政治的な側面にスポットを当てず、北朝鮮に住む人々に注目されました。世界の人々の暮らしを、平等な目線で描き、人間的な内容が込められていて本当に素晴らしかったです」

作家パクの作品に込めた想いは俳優陣にまで行き渡り、一丸となって作りあげられたからこそ、仕上がった出来映えなのだろう。一方で、ドラマ関係者や視聴者たちの朝鮮半島への平和に対する思いが強まっているなか、現在南北関係は緊迫した状態にある。韓国から脱北者団体が北朝鮮の政府を批判したビラをまいたことに反発し、金正恩の妹である金与正が開城にある南北共同連絡事務所を爆破するなど、両国の動きから目が離せない状況だ。

2018年に行われた南北首脳会談以来、韓国と北朝鮮の間で目立った交流をあまり見ることができていなかった。このような情勢のなかで「愛の不時着」のロングヒットは、今後の朝鮮半島の進展に、世界中の人が関心を持つきっかけになっていることは間違いないだろう。現実には、このドラマのようなストーリーが実現することはなかなか難しい。だが、近くて遠い国の人々の心温まる繋がりを描いたドラマは、今後もきっと愛され続けるだろう。

文=裵麗善 /Ryoseon Bae

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