「 #愛の不時着 」なぜ爆発的ヒット? 北朝鮮出身者も協力した制作の舞台裏


また、同じく多くの脱北者が感銘を受けたシーンは、セリが宿泊検閲で姿を隠すためにキムチの倉庫に忍び込むシーンだ。宿泊検閲は北朝鮮ではごく一般的で、脱北者たちも実際にセリのように倉庫などに隠れたりしたことがあるそうだ。脱北者のパク・ユソンは、自身のユーチューブで「なぜそこまで(事実を)知って再現できたのか」と感嘆していた。

一方で、再現しきれなかった部分もいくつかあるという。一つは北朝鮮に住む人々が、必須とされる徽章を全員がつけていなかったことだ。カン・ナラは「徽章は無条件でみんなつけないといけません。この部分が再現されていなかったのは少し残念でしたね。ドラマでは軍人たちや一部の人はつけていただけでした。あとはピョ・チス(ヤン・ギョンウォン)がよくセリに『エミナイ(小娘)!』と言っていましたが、北朝鮮ではあまりエミナイという言葉は使いません(笑)しかし、彼の演技は他の共演者たちと比べると群を抜いて秀でていました。北朝鮮の方言があまりにも上手で驚きました」

非現実的な部分があったにせよ、脱北者たちがこれほど高い評価をしているのを見ると、北朝鮮に一度も訪れたことがない、ないしは訪れることができない韓国人たちによる限られた条件の中での演出としては、上出来ではないだろうか。

ドラマ放送後、韓国人は「統一」に積極的か?


感動や絶賛の声が絶えない中、BBCニュースによると「北朝鮮を美化しすぎている」や「統一を露骨に支援しているドラマだ」という批判の声を漏らす視聴者たちもいる。この点について、実際に韓国のテジョンに住む23歳の大学生の女性にドラマの内容や朝鮮半島の統一についてどのように考えているか、話を聞いてみた。

「南北統一を支持する人の割合は、私の周りを見るかぎり5:5のように思える。今回のドラマで統一を願う人たちの数や想いが増えた一方で、ドラマだと割り切ってそれ以上考えない人もまだ多い。経済格差や政治的問題、イデオロギーの違いなど、統一を実現するには解決しないといけない問題が確かに多すぎる」

本ドラマでは、会いたくても会えない境遇に苦しむ人々や離散家族など、38度線の「分断」による痛みを主人公のセリとジョンヒョクを通して表現した。1953年以来2つの民族としてそれぞれ独立し、数十年が経ったいま、ドラマ視聴後の現状を考えると、韓国の人たちは統一された未来に現実味がないようだ。
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文=裵麗善 /Ryoseon Bae

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