現役看護師の僧侶が語る、「死の1カ月前」頃から起こる3つのこと

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3. 夢か現かわからない不思議な幻覚を見る


この頃になると、1日のほとんどを眠って過ごすようにもなります。そして、夢とも現ともわからない不思議な幻覚を見たり、意味のない体の動きをしたりします。意味のない体の動きとは、暑いわけでもないのに、布団を掛けても掛けてもはいでしまう、というような動きです。不思議な幻覚とは、亡くなった家族や実在しない人と会ったり、知らない場所に行ったりしたことを、現実のようにリアルに体験することです。

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「亡くなったお母さんが川の向こうで手を振っていた」というような、俗に”お迎え現象”と言われる類の話も多いため、それを聞かされると家族は「縁起でもない」とか、「何バカなことを言ってるの」などと否定してしまいがちです。言われた自分の気持ちがザワザワするからです。けれども本人にとってそれは、縁起でもないことでもバカなことでもなく、ごく普通に”体験した”こと。否定せずに、本人の世界を認めながら聞くことが大切です。

病棟にいた頃、私も患者さんから不思議な話をよく聞きました。あとから数えれば、亡くなるまで3週間を切っていた患者さんに、「毎晩、船が来る」という話を聞いたこともありました。毎晩、毎晩、船が来て、船頭に「乗せてくれ」と言うのだけれど、いつも乗せてもらえない。船が空なのに乗せてもらえない、と言うのです。

医学的には、このようなお迎え現象は、脳が酸欠になっているために見る幻覚だとされています。亡くなるまで1カ月を切る頃には、ガス交換がうまくいかず、慢性的な呼吸不全に陥る場合があります。そのため、体内では酸素が不足してきます。体内で最もたくさん酸素を使うのは脳ですから、脳が最初に酸素欠乏に陥ります。そして、酸欠になると脳は幻覚を見るのです。それは、高山病になると幻覚を見ることなどからもわかっています。

ただ、このように科学的な説明はつくのですが、いろいろな患者さんの話を聞くと、それだけでは説明がつかないことがあるような気もします。


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