バイエルはラウンドアップの製造元のモンサントを、2018年に630億ドルで買収していた。裁判ではラウンドアップの除草剤の主要成分であるグリホサートの発がん性が争点とされたが、モンサントやバイエルは、マニュアル通りに使用すれば安全であると述べていた。
バイエルはプレスリリースで、88億ドルから96億ドルを和解金の支払いにあてると宣言し、今後の訴えに備え追加で12億5000万ドルを用意したと述べた。和解により、約9万5000件の訴訟が終結するという。しかし、今後も約2万5000件の訴訟が未決着のままとなる模様だ。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、新型コロナウイルスのパンデミックで全米の法廷が閉鎖されたことが、今回の合意につながった可能性を指摘した。
バイエルの株価は6月24日の市場で2.5%近く上昇した。「これほど巨額の和解金が支払われるケースは稀だ」とスタンフォード大学の法律学教授のNora Freeman Engstromは、NYTの取材で話した。
バイエルが今回、追加で用意した12億5000万ドルのうちの一部の資金は、グリホサートの発がん性を調査する専門家パネルに用いられる。仮に発がん性が確認された場合、治療法の検討も行われるという。
グリホサートの発がん性は2015年にWHOの関連団体によって指摘されたが、2017年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)はこの説を否定していた。合衆国環境保護庁(EPA)も今年1月のレポートで、ラベルに記載された通りの使用法を行えば、グリホサートに危険性は無く、発がん性物質にはあたらないとの見解を示していた。
モンサントも長年の研究結果から、グリホサートは安全だと述べていた。
2018年にバイエルがモンサントを買収した直後に、カリフォルニア州の裁判所はラウンドアップが、学校の校庭管理人を務める人物のがんを引き起こしたと結論づけ、バイエルに対し2億8900万ドルの損害賠償支払いを命じていた。
その後も、別の裁判所が2018年と2019年に同様の決定を行ない、8000万ドルと20億ドルの賠償金支払いを命じていた。その後、賠償金の額は引き下げられたが、バイエルの株価は大きなダメージを受けた。
2019年8月にバイエルは80億ドルの賠償金支払い提案を行ない、費用の捻出に向けて動物用薬品ビジネスをエランコに76億ドルで売却すると発表した。直近では6月22日に米連邦裁判所が、カリフォルニア州の裁判所がバイエルに下した命令を無効とした。州の裁判所はバイエルに、ラウンドアップのラベルに発がん性表示を行うよう命じていた。