米国400都市で進む「下水からコロナ検出」、MITの研究者が主導

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米国の数百もの都市で、下水道を流れる糞便から新型コロナウイルスを検出する試みが進んでいる。オレゴン州やカリフォルニア州、ニューヨーク州、ユタ州、フロリダ州などの行政がスタートアップ企業や大学と連携して下水の分析を進め、ホットスポットを早期に発見しようとしている。

「今年の秋に新たな感染拡大が起きることは確実だ。そのための準備を進めている」と、オレゴン本拠のClean Water Servicesのケン・ウィリアムソンは述べている。「介護施設や病院、学校など様々な拠点からサンプルを入手し検査を進めていく」

人間の糞便には1グラムあたり1000万から10億個のウイルスが含まれており、新型コロナウイルスの感染症を発症する前の人々の糞便からも、ウイルスが検出可能なのだ。

下水から収集されたサンプルは大学の研究者やスタートアップ企業の「バイオボット・アナリティクス(Biobot Analytics)」などによって分析されている。ニューヨークでは既に専用の分析センターが開設された。

このテクノロジーはまだ発展途上であり、どの程度の割合で糞便からコロナウイルスが検出可能なのかは定かではないが、オレゴン州立大学の生物学者のTyler Radneikも、下水の検査でホットスポットを突き止めようとしている。南カリフォルニアの現地当局も5月初旬からテストを開始したが、結果はまだ公開されていない。

ニューヨーク州のエリー郡の当局は6月23日、下水から約2万件のコロナウイルス感染症を検出したが、これは州が確認した感染者数の約3倍の数字だった。

ニューヨーク州のホフストラ大学教授のKevin Biscegliaは、「下水の検査は感染の拡大動向を迅速に把握する上で、非常に有効な手段となる」と述べている。

下水の検査によって様々なウイルスが把握可能であることは、以前の研究でも明らかになっていた。2010年から2013年にかけて、日本の研究者らは下水からポリオウイルスを検出することに成功していた。

一方、オランダでは今年3月の段階で、下水から新型コロナウイルスを検出する実験が行われ、最初の感染者が報告される6日前に、ウイルスの存在を把握していた。同様の試みはイタリアやフランスでも行われていた。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが立ち上げたスタートアップ企業バイオボット・アナリティクスは、4月に420万ドル(約4億5000万円)の資金調達を行ない、糞便からのコロナウイルスの検出を進めている。同社はフロリダ州のマイアミデイド郡や、ニューヨーク州のエリー郡を含む400の都市と共同で調査を実施中だ。

編集=上田裕資

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