例年であれば、Zhangはカリフォルニア州サンノゼで開催されるアップルの開発者会議WWDCに招かれたはずだが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、WWDCはオンラインのみの開催となった。今年の学生奨学金プログラムは「Swift Student Challenge」という名称で呼ばれている。
「サンノゼに行けなくなったことは残念だが、自分の作品が選出されたことは嬉しい」とZhangは香港のカフェで筆者に対して語った。Swift Student Challengeの課題は、アップルが開発したプログラミング学習アプリ「Swift Playground」で3分以内に体験できるバーチャルなプレイグラウンドを作成するというものだ。
Zhangの作品は、優れたコーディングとAR(拡張現実)を盛り込んだことで、高い評価を得た。アップルは、2017年にiOS向けの開発ツール「AR Kit」をリリースして以来、ARへの取組みを強化している。
Zhangの作品「Cuby’s Journey Back to The Geometry Galaxy」は、ブロックを操作してプログラムを組むと、Cubyというキューブ型のキャラクターが実世界を移動し、ユーザーはCubyをゴール地点まで移動させるというものだ。
Zhangは将来的に、プログラミングを通じて教育に携わりたいと考えている。彼は恵まれない子供たちにプログラミングを教える香港のNPO「Code+Create」に参加し、昨年はリーダーとしてカリキュラム設計を手伝った。
Zhangによると、アップルのSwift Playgroundは、プログラミング体験をより楽しく、インタラクティブにしてくれるという。アップルは、これを“gamified coding(ゲーム要素を取り入れたプログラミング学習)”と呼んでいる。
Zhangが初めてプログラミングを習ったのは、まだ上海に住んでいた12歳のときだ。その後、香港にあるチャイニーズインターナショナルスクールに入学し、プログラミングに没頭するようになった。彼はこの秋に高校3年になり、米国か英国の大学への進学を希望している。専攻は決めていないが、教育以外には医学に関心があるという。
「従来は、最初にテクノロジーが進化し、それに続く形で医学が進化してきた。しかし、プログラミングやコンピューティングの進化により、テクノロジーと医学はこれまでになく融合している。私は、生物医科学や、コンピューティングが医学に及ぼす影響について知りたいと思っている」とZhangは話した。
Zhangはこの夏、香港で初めてのハッカソンを開催する計画を立てている。今年のサンノゼ旅行はなくなったが、アップルは、WWDCが来年、通常開催に戻れば、今年選出された学生たちを招待すると述べている。