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フォーブス ジャパン編集部 エディター



(左)クリストファー・グレンジャー、(右)サムエル・デイビス

「企業と社会が抱える課題について、自分とクリストファーは同じ考えを持っていましたが、当時は明確な解決策がなく、ただのアイデアしかありませんでした」(サムエル)

それから2年ほど時が経ち、2016年。過去に同じ特許調査会社で働いていた、共同創業者の追川康之と東京の花火大会で再会。そこで「特許制度の抱える多くの問題が実はディープラーニングによって解決できるのではないか?」という話になったという。

「これまでの実務経験から、製品コンセプトやビジネスチャンスは明確にあると確信を持てていたのですが、技術的な部分に難しさを感じていました。これまでに十分な資金のある大企業が何社もこのアイデアに試み、全て失敗していましたし……。それで自然言語解析や機械学習を用いて特許データを解析する手法を研究していたクリストファーを含め、3人で具体的に話してみることにしたのです」(サムエル)


追川康之

サムエル、追川、クリストファーの3人で初めて開催されたZoom会議──そこで具体的な話をしていくと、クリストファーも2年前にサムエルと議論した問題について研究と調査を進めており、同じ答えにたどり着いていたのです。それが「ディープラーニング」でした。

その後、数回の議論の末、3人はクリストファーが博士号のために構築していた仕組みを活用して概念実証を行うことを決意。その2カ月後、当時世に出ていた最も精度の高い概念検索ツールに匹敵する検索結果が得られたことで、「amplified ai」の創業を決めたという。

テクノロジーによって特許制度の課題は解決できる


ユニクロとGUのセルフレジが特許侵害で訴えられているニュースが最近話題となっているが、これまでに作りあげてきた特許文献の総数が1億件を超えていることから、「誰がどんな特許を持っているか」「この発明に関する特許は何か」といった情報を簡単に得ることができなくなってしまっている、とサムエルは語る。

「特許制度を取り巻く課題は、かつて発明を促進するために誕生した『特許制度』自身が、正しく運用されているにも関わらず、発明や事業に対するコストになっていることです。この最大の原因は、膨れ上がった“特許”そのものです。特許制度は“独占”による発明者の便益と、発明の“公開”による社会の便益のバランスで成り立っています。

しかし、特許文献の総数が膨れ上がった結果、適切な特許文献を簡単に手に入れることができず、『誰かの特許を侵害するリスク』『自分の発明が過去の発明と同じだった』という問題が事業を進めた後に顕在化したり、『一度認められた特許が無効になる』『認められるべきではない特許で訴訟が起きる』と言った制度の濫用や権利の不安定化が起きたりしています。

特許制度をめぐる課題はたくさんあります。例えば、ソフトウェアはどのように特許として保護されるべきか、AIによる発明は特許の対象になるのか、特許不実施主体(NPE)やパテントトロールによる権利行使の是非、5GやWi-Fiに代表される技術標準に関わる特許の運用など、さまざまです。

これらの問題は全て重要な課題ですが、あるものは特定の産業において重要であったり、あるものは政治的な問題であったり、あるものは法解釈の問題であったりします。しかし、先に述べた『膨大な特許文献の中から適切な文献を見つけ出せない』という問題は、特許制度を利用する全ての人に関わるとともに、テクノロジーによって解決できるものです。だからこそ、私たちはこの問題に取り組んでいるのです」(サムエル)

文=新國翔大

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