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宇都野 勇児/株式会社 明治 マーケティング本部 発酵乳マーケティング部

明治のヨーグルトといえば、主力商品の「明治ブルガリアヨーグルト」を始め、胃で働く乳酸菌入りの「明治プロビオヨーグルトLG21」、強さひきだす乳酸菌入りの「明治プロビオヨーグルトR-1」、尿酸値の上昇を抑える乳酸菌入りの「明治プロビオヨーグルトPA-3」など、次々と人気商品を展開し、ヨーグルトの持つ可能性、市場価値を高めている。

そんな固有の健康価値を持った乳酸菌入りヨーグルトである「明治プロビオヨーグルトシリーズ」は老若男女に愛され、ロングセラー商品となっている。「明治プロビオヨーグルトLG21」は、発売より今年で20年、「明治プロビオヨーグルトR-1」は10年、「明治プロビオヨーグルトPA-3」は5年で、それぞれ周年を迎えた。

なぜ明治はロングセラーとなるヨーグルト商品を生み続けられるのか。その裏には、自社研究で見出した乳酸菌の良さに裏打ちされた、地道かつ革新的な戦略があった。

周年という節目に、長年にわたって愛され続ける理由を株式会社 明治 マーケティング本部 発酵乳マーケティング部の宇都野 勇児が語る。


2000年、ヨーグルト市場に革命が起きた


プレーンヨーグルト、ドリンクヨーグルトのほか、寒天やゼラチンを加えてプリン状にしたハードヨーグルトや、甘味料や果汁・果肉などを加えたソフトヨーグルトなどを含め、1973年には100億円に満たなかった国内ヨーグルトの市場規模は、2019年度で年間4000億円を超えるなど(「明治調べ」)、今も成長を続けている。

日本のヨーグルト市場で起きた一大センセーショナルといえば、2000年に発売された「明治プロビオヨーグルトLG21」だろう。

「それまで、ヨーグルトは“健康によい”という漠然としたイメージで知られていましたが、『LG21』は、固有の乳酸菌の健康価値を訴求したヨーグルトのパイオニアで、日本のヨーグルト市場に新たなカテゴリーを創出したんです」(宇都野)

一般的に胃酸に弱いとされる乳酸菌だが、「LG21乳酸菌」は胃内での生残性と増殖性が高い乳酸菌を選び抜き、「健康によい+α」の価値が加わったのだ。

今でこそ、多くの人が毎日の食生活に取り入れている「LG21」だが、その開発の道のりは決して平坦ではなく、じつに2500種類以上(当時)の乳酸菌の中から約2年の月日をかけて発見された。

発売後「LG21」は、「リスクと戦う乳酸菌」というキャッチコピーで展開し、現代社会で戦う人々のおなかを、おいしく健康的に支えることを訴求した。

すると、「それまでヨーグルトと言えば女性がメインユーザーだったのですが、男性にも強い支持を得るようになったんです」と宇都野も充実した面持ちで語る。さらに、2018年には、ターゲット層に向けて、訴求ポイントを明確にするため、キャッチコピーを「リスクと戦う乳酸菌」から「胃で働く乳酸菌」に改めた。現在では、累計販売数70億個を突破している。(※2017年6月時点 ※宅配商品含む)

そして、「LG21」に続き、明治が2010年1月に全国発売されたのが、「明治プロビオヨーグルトR-1」。「強さひきだす乳酸菌」をキャッチコピーに、体調管理を目的としたヨーグルトとして発売された。

しかし、「『R-1』は販売当初、全くと言っていいほど売れなかったですね」と宇都野。2010年当時、3カ月で4000万個前後売れる「LG21」に対し、「R-1」はその100分の1にも届かない。売れなかったのは初年度だけではない。「LG21」が発売から10年近く経っても堅調な売上をキープし続けるのに対し、2年目に入ってもヒットの兆しが見えず、売り上げは低空飛行のままだった。

数多くの新商品が登場しては消えていく業界において、1年どころか、2年たっても売れない商品を出し続けることは会社にとってデメリットしかない。明治はなぜ撤退しなかったのか。

「R-1」大逆転の戦略とは


その理由を紐解くカギの一つに「R-1」がどのようにして生まれたかを知る必要がある。「胃で働く乳酸菌」という、健康価値と美味しさを両立させて売れ行きが好調な「LG21」に対し、「いままでにない新商品を作る」というコンセプトで開発に着手した「R-1」。「LG21」に追いつけ、追い越せといったチャレンジの一環だったという。

胃の健康を考える人がターゲットだった「LG21」に対し、「R-1」は体の中から「強さひきだす」というコンセプトのもと、明治が自社保有する乳酸菌の菌株から選び抜き、製品化に繋げた商品。その地道な研究は、十数年かけて行われた。

「今までにない新商品だということをアピールするためにも、既存のヨーグルトが白や青のパッケージなのに対し、赤を基調としたデザインにしました。ヨーグルトの常識を覆すカラーリングです。明治のカラーでもあり、生命力、躍動感を想像させるイメージ、そして店頭に陳列した際、目立つことも計算にありましたね」(宇都野)。



しかし、発売当初は、売上が伸びない日々が続いたため、まずは「R-1」を多くの人に食べてもらい、その良さを実感してもらう活動を始めた。

幼稚園や小学校、スポーツイベントやキャンペーンなどで配布し、とにかく食べてもらえばわかってもらえると信じ「R-1」の試食を精力的に続けた。当時のことを宇都野は「配ってばかりいましたね。いつか誰かがわかってくれると信じて。社内では、売っているより配っている方が多いんじゃないか、と言われたこともありました」。

売上が伸びない商品に対し、社内の雰囲気はどうだったのか。「批判より、社内全体が、諦めるなといった叱咤激励の雰囲気がありました。特徴的な面白い乳酸菌だからいつか認めてもらえる、老若男女というターゲットの広さから、認知度が上がれば人気が出る商品であると期待されていたからだと思います」。

地道なPR活動と、人々の健康への意識がより深まっていく時代背景などが合致したとき「R-1」ブームは突然やってきた。

それまで月数千〜数万個の売り上げだったのが、2012年4月には3カ月で2千万個が売れるようになり、2013年4月には「LG21」とほぼ同数の売上に。以降、3カ月ごとに4千万個をコンスタントに叩き出した結果、今ではLG21の売り上げを超える大ヒット商品へと大化けした。

「いきなり売れたことで、社内の生産体制が整わない。一時期はなかなか手に入らないヨーグルトになってしまいましたね。生産体制が整って、お客様の元に届くようになって落ち着いてから、ようやくCMを、というほどでした」。

長い低迷期、そして突然のヒット。発売から10年目を迎えた現在も3カ月で8千万〜1億個売れるメガヒット商品へと成長した「R-1」。健康価値をもった乳酸菌入りヨーグルトの開発、地道なPR活動、消費者の要望や時代の流れなどを見据えたマーケティング、時間はかかっても売れると信じる気持ち。様々な要因が重なり、逆境がチャンスへと変わっていったと言えるだろう。

さらに明治は2015年4月に、「LG21」「R-1」に続く第3のプロビオヨーグルトとして「PA-3」を発売。「PA-3」は、尿酸値の上昇を抑えることが報告されている「PA-3乳酸菌」を配合した機能性表示食品。「R-1」が老若男女、全世代をターゲットにするのに対し、「PA-3」は尿酸値が気になる、コアな層への直接的なアピールで差別化を図っている。

「発売当時は、ビールなどでもプリン体オフの商品が出始めた頃でした。商品に大きく、“プリン体と戦う乳酸菌”(現在のキャッチコピーは、「尿酸値の上昇を抑える乳酸菌」)、と表示することで、コアなターゲット、本当に必要な人に伝わるようにしました」。大勢の人に広く、ではなく、必要な人が買って毎日食べるという、対象を絞りつつも、安定した利益をあげる商品となっている。

そして2020年4月には、機能性表示食品の紫外線対策商品「明治スキンケアヨーグルト素肌のミカタ」が登場。「飲むことで紫外線から肌を守る」と機能価値を大きく前面に表記し、紫外線対策に関心のある20~60代の女性を中心に訴求している。「明治はコラーゲンやセラミドの研究もしているので、乳酸菌の研究と合わせた商品開発が可能です。抗紫外線作用、抗乾燥作用が期待できる、といった、紫外線対策を内側からサポートすることを目指したヨーグルトです」。

「一番最初に飛び込む」が成功のカギ


「LG21」から始まり、健康価値を持つヨーグルトを次々と売り出し、人気商品へと育てていく。開拓者であり、トップランナーでもある明治は、なぜ次々とヒットを飛ばせるのか。

「1番最初にやることで成功率は高くなる」と宇都野。後発でも売れる商品はあるが、先駆者であることが成功の要因の一つであり、様々なチャレンジをすることが重要だと語る。「よそがやっていないことをやろう、というのが常に根底にあります」。

そのため「外からだと次々と成功しているように見えるかもしれませんが、実はその倍以上失敗しているんです」とも。過去には時代のニーズより早すぎるタイミングで販売し、消費者に認知されなかったGABA入りのヨーグルトや、デザートのような嗜好性を追求したヨーグルトなど、美味しいけれど消費者にとって価値とニーズが合わなかったものが生産終了に。挑戦していくことの大切さが、「LG21」や「R-1」の成功の礎となっている。

また、心がけているのが情報収集だ。「とても美味しいけれど、お客様の求めているものではないのなら、価値とニーズは一致しない。今お客様が求めているものは何か。時代背景、社会の状況など複合的に捉えて、どうしたら買っていただけるのかを、これからもしっかり見つめていきたいと思います」。

商品を消費者が実際に手にとって食べてもらうため、店頭での並べ方にも、明治独自のアピール方法を店側に提案しているという。「『LG21』が発売される前は、個食のヨーグルトが売られている場所は特売商品や大容量タイプのヨーグルトの売り場の棚の上であるのが一般的だった。それを、一番下の段に個食タイプを置いてもらえるよう、お店の人に何度もお願いをしました。さらに、LG21の青、R-1の赤、PA-3の黄色、と、青、赤、黄色が売り場で目立つよう、横に並べるのではなく縦の配置をお願いしています」。

最初は半信半疑だった店側だが、縦型陳列により、明治のヨーグルトがどこに置いてあるのか色で見つけやすくなる、というメリットが生まれた。「カラーコントロールによって、それぞれの商品の個性も際立たせることにも繋がっています」。



今後も、高い研究力と徹底的なマーケティング力を活かし、美味しいと健康の両方を届けるヨーグルトを開発、挑戦していくという明治。乳酸菌は菌株によってそれぞれが持つ固有の価値=個性が異なる。そのため、乳酸菌が持つ可能性はまだ未知数であり、今世の中に出ているものは氷山の一角だと語る。「将来は、一人でも多くの人に、もっと日常的に、そしてもっと多くヨーグルトを食べてもらえる世の中になればいいですね。朝食のイメージが強いヨーグルトですが、昼や夜、料理の食材としても可能性は未知数。将来食文化の進化へと繋がっていくと信じています」。

将来、可能性、これから───。宇都野から湧き出る言葉は前を向いている。「より健康でより良い社会」を見つめ続ける明治の次なる一手に期待せずにはいられない。





明治プロビオヨーグルトLG21
https://www.meiji.co.jp/dairies/yogurt/lg21/

明治プロビオヨーグルトR-1
https://www.meiji.co.jp/dairies/yogurt/meiji-r1/

明治プロビオヨーグルトPA-3
https://www.meiji.co.jp/dairies/yogurt/meiji-pa3/

明治スキンケアヨーグルト素肌のミカタ
https://www.meiji.co.jp/products/brand/suhadanomikata/

Promoted by 明治/ text by 石澤 理香子 / photographs by 平岩 享

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