セカンドパスポートの入手に関心のある富裕層の人にとって、最もおすすめできる国の一つとして、地中海の島国キプロスが挙げられる。いくつか理由を並べると、素晴らしい気候、海の見える美しい景色、安定した政府、良好な経済、大きな市場との近さなどだ。キプロスは新型コロナウイルスにもうまく対応していて、感染者はかなり少なく、経済への打撃も比較的軽微ですむとみられる。
キプロスの経済は英国のコモンローに基づいて運営されており、ビジネスフレンドリーで、外国からの投資に開かれ、税率も低い。コロナ後を見すえた生活の質(QOL)に関して言えば、医療や教育の水準も高い。
キプロス政府が実施しているセカンドパスポートプログラムは、投資によって短期間で市民権を得られる欧州唯一の制度でもある。投資者とその家族は、市民権の取得や保持のためにキプロスに住まなくても、欧州連合(EU)域内のどこでも移動や就労、生活などができる。
キプロスでは二重国籍が認められており、申請者は半年以内にパスポートを得られる。パスポートはどの国の人でも申請でき、取得すればシェンゲン協定に加盟する欧州諸国のほか、カナダや英国、オーストラリア、シンガポール、香港など171カ国・地域へのビザなし渡航も可能になる(ただし、米国は含まれない)。
キプロスの市民権を得るには、キプロスで215万ユーロ(約2億6000万円)以上の投資をすることが条件になる。最も一般的なのは、住宅不動産に5年で200万ユーロ投資し、別に15万ユーロ(政府によって低価格住宅や調査に使われる)を支払うというものだ。これに加え、投資者は生涯にわたってキプロス国内の不動産に少なくとも50万ユーロ投資しておく必要があるため、5年後に回収できるのは150万ユーロということになる。
キプロス政府が設けている投資移民申請枠は年700人となっているものの、申し込みが遅れた人はたんに翌年の処理に回されるだけなので、枠数について心配する必要はないだろう。
プログラムの魅力としてはこのほか、申請後すぐ永住カードが発給されること、投資者がセカンドパスポートの交付を待つ間、本人と配偶者、28歳未満の扶養する子どもは市民権を取得する権利をもち、さらに65歳以上の高齢の親も扶養家族として市民権を申請できることなども挙げられる。ついでに言えば、キプロスでは英語が広く使われている。
投資移民を検討している人のなかには、相手国がコロナ禍への対応で債務を膨らませ、将来的に税率の引き上げにつながるのではないかと心配する向きもあるかもしれない。しかし、キプロスの財務相を務めたハリス・ゲオルギアデスは最近、キプロスは幸いにも経済が堅調な状態で今回の危機を迎えたと述べており、実際、財政赤字にならず対処できている状況からみて、今後、増税などの心配はしなくてよさそうだ。
キプロスは現在はたしかに平和で安定しているものの、トルコ系住民が住む北部とギリシャ系住民が住む南部に分かれ、「独立」後トルコだけに承認されている北部の帰属争いに今日も翻弄されている。とはいえ、この問題も、近いうちにキプロスに深刻な打撃を与えるようには思えない。
こうしたもろもろを考え合わせると、セカンドパスポート取得のために投資する余裕のある人にとって、キプロスはうってつけの国ではないだろうか。