ビジネス

2020.07.23

なぜ優秀なデザイナーでも酷いデザインを生み出してしまうのか?

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PM主体のプロジェクトプロセス


プロジェクトに取り組むイメージ
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ユーザーとの対話がデザインプロセスの中で最も重要なポイントであるのであれば、デザイナー自身がエンドユーザーとの対話ができていないのに優れたデザインを生み出すのは、ほぼ不可能に近いだろう。しかし、多くの場合は、プロジェクト担当者やPMの方が表に立ち、デザイナーはあくまで"裏方"として仕事を進めていく。ここにプロセス的に大きな問題が潜んでいる。

デザイナー自身が直接ユーザーとの対話ができないことでモチベーションが下がり、デザインのオーナーシップが失われる。そして、その後はデザイナーとPMとの伝言ゲームが始まり、負のスパイラルに陥る。加えて、デザイナーは最終的なビジネスゴールを理解するのが難しくなり、見た目のデザインだけに終始してしまう現象が発生する。

典型的な結果例: 見た目のクオリティーは悪くないが、妙に使いにくいUX

フィードバックではなく承認を求め始める


プロジェクトにおける定期的なチェックポイントでは、主にフィードバックとディスカッションに時間を費やすべきなのであるが、チーム内、およびデザイン会社とクライアントの間でフラットな信頼関係が構築されていない場合、どうしても、承認を得るのが目的になってしまい、ミーティングの内容も「これで進めて良いでしょうか」に終始してしまう。

このプロセスに巻き込まれると、承認を得るために、決定権のある人の顔色ばかりを伺ってしまい、デザイナーのスキル以上のアウトプットを出すことが不可能になる。

典型的な結果例: とてもダサいデザイン

身の丈に合わないプロダクトスペック


サイトやサービス、プロダクトを考える際には、リリースした後の状態も考慮して設計をする必要がある。と言うのも、あれもこれも含めてしまって、リリース後にコンテンツが間に合わないケースが多発しているからだ。

例えば、更新頻度がめっちゃ低いブログや、表記項目だけあって、中身が空っぽのECページなど、明らかにリリース後の運用フェーズを想定せずにデザインされていることが意外と多い。また、リソースの足りなさから、箱は作ったものの、中身が空っぽの状態でユーザーに届けられる。

そうなると「これ、誰が責任持ってアップデートしていくの?」という質問が公開後にされ、短時間でサービス終了に追い込まれるケースも少なくない。

典型的な結果例: UIは美しいが、コンテンツが空っぽのアプリ

チームメンバーの主観だけで決めてしまう


優れたデザインプロセスには、ユーザーとの対話が不可欠である。しかし、現実はそれを行っていない場合の方が多いだろう。なぜなら、デザイナーを含めた、プロジェクトチームのメンバーの直感で多くのことが決められるからだ。人間は視覚で物事を判断しやすく、ことビジュアルデザインに関しては、エンドユーザーでなくとも、意見が言いやすい。

それが上司なのか、クライアントなのか、製作者なのかはケースによって異なるだろうが、想定される利用者からのフィードバックを得ずにデザインされたプロダクトのクオリティーはどうしても低くなってしまいがちである。

典型的な結果例: 説明してもらわないと意図が伝わりにくいプロダクト
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文=Brandon K. Hill(CEO of btrax. inc)

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