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THE TRUTH

浦和レッズの長澤和輝は、SNSを通じて医療従事者へ感謝を届けるムーブメントを起こした。写真:Hiroki Watanabe - JL / 特派員/Getty Images

コロナ禍により2月下旬から公式戦の長期中断を余儀なくされてきたサッカー界から、最前線で戦う医療従事者へ感謝のメッセージを届けるムーブメントを起こしたJリーガーがいる。浦和レッズのMF長澤和輝だ。

長澤がチームメイトたちと協力しながら、インスタグラム上で発信した「#医療従事者は私たちのヒーロー」の投稿は、競技の枠を超えて、アスリートの間で大きな広がりを見せていった。その軌跡と背景を、J1リーグの再開を間近に控えた長澤の心境とともに追った。

思い立って2日で行動に移した


新型コロナウイルスの感染拡大ともに2月下旬からJリーグが中断され、4月に入ると所属する浦和レッズも活動を休止。いつ終わるともわからない自宅待機がスタートした直後の4月9日、長澤は知人を介して、医療従事者が直面している現状を知らされた。そして、思わず耳を疑った。

「実際に僕が目で見て感じたというわけではないのですが、かなり厳しい状況に置かれていると聞いて……」

厳しい状況とは、医療従事者が、いわれのない差別や偏見に遭っているというものだった。医療現場で働いているという理由だけで、新型コロナウイルスの感染者だとされてしまう。それは医療従事者の家族にも向けられ、子どもたちを保育園に預けられないような事態も生まれていた。

新型コロナウイルス治療の最前線で自らも感染するリスクを背負いながら、昼夜を問わずに奮闘している医療従事者には、長澤はかねてから感謝の思いを抱いてきた。そんな人たちが、医療現場を離れたところで、さらに精神的な負担を強いられているという事実を知ったときに、サッカー選手である自分にできることはないかと自らに問いかけた。

すぐに結論が出ないなかで、チームメイトのMF宇賀神友弥に連絡を入れて相談した。スマホの向こう側から「ズームで会議してみんなで考えよう」と提案され、長澤と宇賀神にDF鈴木大輔とMF柏木陽介も加わり、さらに2018年夏から海外へ活躍の場を移しているMF遠藤航もドイツから時差を超えて参加した。

「みんなで夜な夜な話を交わして、次の日にはハッシュタグやインスタのアカウントをつくって、夕方の5時にアップしようということになりました。僕が最初に話を聞いてショックを受けてから2日で始めたことになります」

1人で考えていても堂々巡りになるかもしれない。しかし気心の知れた仲間が4人で集まれば、思いもよらないアイデアも次々と飛び出してくる。彼らがスタートさせたのは、インスタグラムで「@thanksmedicalworkers」というアカウントを開設し、左手を天へと掲げている姿を背中から撮った写真に、「#医療従事者は私たちのヒーロー」というハッシュタグをつけて、感謝の思いを添えて投稿するというものだった。


「プロサッカー選手を目指す小さな子どもたちに夢を与える意味で、僕たちは彼らにとってのヒーローだと思うんですね。ファンやサポーターにとっても同じで、そういう立場にある僕たちが、医療従事者の方々にしっかりと感謝の思いを伝え、あるいはエールを送ることで、差別や偏見をはじめとする、さまざまな難問を解決することにつながるのではないかと思いました」

サッカー選手も含めたアスリートにとって、けがや病気の治療にあたり、競技ができる状態へと導いてくれるという点では、医療従事者が今度は彼らにとってのヒーローとなる。ハッシュタグに「ヒーロー」を入れたのは、常日頃から抱いてきた医療従事者への感謝の思いの表れであり、写真のポーズは人気漫画『ONE PIECE』で描かれる、掲げた左拳を介して仲間同士の強い絆を伝え合う有名なシーンから採ったという。

文=藤江直人

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