一人めの、最も過激なジョンクーパーの登場だ。
専門家ほどではないが、比較的多くのクルマを乗り継いでいる(私のような)人なら、すぐにそのレスポンスが実感できる。アクセルペダルへゆっくりと圧をかけていけば、もうこの時点でわかる敏感な反応。「いくぞ!」という、まるで馬が駆け出す前に前脚を高々と揚げるクールベットと呼ばれる仕草を想像してしまう。
アクセルの踏み込みとそれに反応する加速、車体を前に運ぶ圧倒的な力強さ、それらの流れがタイムラグの少ない印象を持つ。トルクに関しても450N/mと、これまた先代から100N/mを向上。誤解を承知でいえば、初めてEV車に乗ったときのあの敏感で厚いトルクのような印象だ。アクセルの少しの踏み込みに正確にならうパワーはドライバーとクルマの一体感を醸成し、同じ2000cc以下のクラスの中で並ぶものは無いほどのインパクトがある。車体を機敏に動かす力は決してミニサイズではない。
試乗コースは、サーキットの敷地を出た一般道だ。クネクネと曲がる林道で少々狭い。(当然ながら制限速度で)地を這うように曲がり、加速にブレることなくカーブを脱出する。楽しすぎる。SPORTSモードはエンジンだけでなく、サスペンションもモードに合った設定に変更される。路面の凹凸を比較的しっかり受け取り、決して跳ねることなく這うイメージだ。
一見、深めのシートに見えるが、運転席に収まるとそれは錯覚であり、コンパクトSUVならではの高さゆえ良好な視界が広がる。カーブの連続でもドライバーに一切の不安はない。
二人めは爪を隠す紳士のジョンクーパーだ
試乗コースは、山間部から一般道へ。
あたかも、アクセルに足を置くだけで機敏に動いた荒ぶる感度から一転、非常にスマートな乗り心地を堪能できる「MIDモード」。特に、クルマの流れがスムーズに流れ始め、大きな流れに合流する時があるだろう。そんな時、クルマ全体を押し上げてくれるような心地よい「移動感」が来る。
二人目の彼は、鍛え上げられた肉体の上に、セビルロウで仕立てたスーツを着た紳士かのようだ。決して自分の力をひけらかさない。キングスマンという映画があったが、ゆるまないネクタイ、外さないカフス、そして敵を倒す実力というアレだ。英国というのは、そういう文化なのか?
そしてこのMIDモード、決してSPORTSモードに劣らない。それは「スポーツプログラムモード」といういわばオプションがあるからだ。走行中にシフトレバーを左に押すとそれは始まる(下写真)。エンジンが高回転域までよくまわり、「音」が変わる。一気にパワーを注入された感覚が体感される。MIDだけでなくすべてのモードで使え、加速、レスポンスが向上する。
3つのモードそれぞれで「S」スポーツプログラムは対応する。