Close RECOMMEND

AI通信「こんなとこにも人工知能」

Photo by Lena Kudryavtseva on Unsplash

新型コロナウイルスによる巣ごもり消費拡大の影響で、書籍の文字データを録音した音声コンテンツ「オーディオブック」の利用率が、国内市場で高まっているとの報道がある。

オーディオブック市場はまだ成立から間もなく、世界的な動向を分析したデータがほとんど存在しない。ただ一部の調査会社やコンサルティング企業の予測を総合すると、世界的に25~35億ドル規模の市場があると報告されており、利用者数の増加とともに今後も順調に拡大していくと予測されている。

またオーディオブックの順調な消費拡大の背景には、スマートフォンに加え、AIスピーカーなど音声ベースの再生端末の普及がある。消費動向としては、プラットフォーム事業者から1作品ずつダウンロードする購買方式がいまのところ主流だが、今後は定期購読(サブスクリプション)などのビジネスモデルも定着していくと見られている。

新たな書籍の楽しみ方として広がりつつあるオーディオブック・カルチャーだが、市場の拡大を牽引する技術のひとつとして、人工知能(AI)の存在は欠かすことができない。

AIはオーディオブックにさまざまな形で寄与するが、代表的なものに「字幕生成」がある。例えば、アマゾンが運営するプラットフォーム「Audible」では、オーディオブックの字幕をAIで生成する機能を備えている。「テキスト-音声変換」もオーディオブックのユーザビリティ向上に寄与するだろう。

大量のテキストデータをナレーターがひとつひとつ録音することも可能だろうが、多くのコストがかかり非効率だ。そこでは、より人間らしい発音や情緒で文字を音声に変換してくれるAI技術が役立つ。

オーディオブックと音声生成技術の融合により、簡単に好きな人の声でオーディオブックを読んでもらうということも現実になり始めている。もちろん、声はプライバシーや権利の保護対象であり、しっかりとルールに則る必要はあるが、音声AIスタートアップ「Lyrebird」などは、わずか数分間分の声データから対象の声を機械的に生成し、テキストデータをその生成した声でアウトプットする技術を開発している。

オーディオブックは現在、紙や電子など従来の書籍の副次的な立場にある。しかし今後、人々の消費行動がどう変化していくかは想像できない。仮にオーディオブックがより普及し、情報処理を行う機能が目から耳へと徐々にシフトするとすれば、表現手法や広告手段にも変化が生まれるはずだ。ターゲティングやレコメンドを行うAI技術にも、新たなイノベーションが必要になってくるかもしれない。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>

文=河 鐘基

この著者の記事一覧へ

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい