「海外勢」としていち早く日本で展開した同社は、現在もCS放送をはじめ、BS11でも番組枠を持つが、TV偏重の日本において踏んだ初期のステップを今も継続し、加えて動画配信に注力する。
「日本の視聴スタイルがどんどん変わっていき多様化しているのです。SVoD各社が成功すればするほど、各社の配信の特徴や、TV、端末、視聴時間などの選択肢が広がるのです。ですから、他社はライバルではなく協力関係という存在です。情報をより深く知りたいときに、私たちのDplayやディスカバリーに来てもらい、ユーザーに近いノンフィクションのコンテンツを提供するのです」
デービットは、そのキャリアが一貫してコンテンツに関わるものだった。NTTドコモでは当時、iモード事業で主にアライアンスに注力し、その後ウォルト・ディズニー・インターネット・グループではアジア・パシフィックのセールスやマーケティングなどを統括するディレクターとして、その後のYouTubeではYouTube Spaceの設立にもたずさわるなど、日本におけるコンテンツとその発信の最前線にいた。
だからこそ、ディスカバリーのノンフィクションというコンテンツの特性とSVoD戦略への理解があるのだろう。
「日本では、ディスカバリーというブランドの認知度がまだまだ低い。そのためにYouTubeで専門チャネルを開設したり、若手ナビゲーターによる番組解説といえる情報発信『Dbox』をYouTubeやインスタグラムなどで積極的に配信するなど、多角的に訴求しています」
YouTubeでのDboxチャンネル。わかりやすい目線で番組への導入を図っている。
Dboxは「女性はサバイバルに向いていないのか?」「日本人がビールを飲むようになったのはいつ?」など、番組へのアプローチを斬新な切り口で紹介するものだが、そのスタートはYouTubeで開設した同社のチャンネルであり、メディアを複合的にあしらうことでノンフィクションの世界へ誘導している。また、番組の多くは海外で制作されたものを日本でコントロールし配信しているが、今後は、日本制作、日本から世界へ発信するプログラムにも力をいれていきたいという。
「日本を感じてもらうことで、今停滞しているインバウンドにも、今後貢献できるでしょう。Dplayの順調な出足は、ディスカバリー=ノンフィクションへの期待です。ディスカバリーが提供するコンテンツは変化していきます」
フィクションも想像力を豊かにする欠かせない手法だが、ノンフィクションもまた人間には欠かせない。Dplayを中心に、今後も秀逸な番組が数多く登場することだろう。ノンフィクションだからこそ、深みある体験が可能になるのだ。
上沼祐樹◎編集者、メディアプロデューサー。KADOKAWAでの雑誌編集をはじめ、ミクシィでニュース編集、朝日新聞本社メディアラボで新規事業などに関わる。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科を修了(MBA)し、大学で編集学について教えることも。フットサル関西施設選手権でベスト5(2000年)、サッカー大阪府総合大会で茨木市選抜として優勝(2016年)。