2019年の動画配信市場全体の規模は2692億円(前年比22.4%増)にのぼり、これは同年の映画劇場年間興行収入2611億円とほぼ同程度となっている(*)。コンテンツを求める欲求が、配信サービスの充実をともなって大きく動画市場の地合いを拡大させているのだ。
*GME Partnersによる〈動画配信市場5年間予測(2020─2024年)レポート〉による
SVoD提供各社は映画やアニメ、リアリティーショー、そして歴史、ドキュメンタリーなど多彩な番組を提供している。ネットフリックスでは自社制作のドラマ番組が増え、huluは民放との連携で多彩さを増し、そして満を侍して6月11日に登場したディズニー+(プラス)など、各社の特徴がさらに明確となり群雄割拠だ。
そのなかで特筆すべきは、ドキュメンタリーなどノンフィクション番組が増えていることだ。これは長年、「ノンフィクション冬の時代」と言われてきたメディア業界では異例の事態と言えるだろう。
テレビも出版もノンフィクションは時間と制作費用がかかる。コストを回収するには万人受けする「感動もの」など敷居を低くしなければならず、質の高いコンテンツを求める視聴者と大きなギャップを生む構造になっていた。結局、「NHKスペシャル」のようにスポンサーのない体制でしかドキュメンタリー番組は制作できず、市場縮小という現象が長年放置されてきた。
では、ノンフィクション番組が急増するのはなぜか。ノンフィクションに特化した専門チャンネルを多数持つ「ディスカバリー」の番組を日本で提供するディスカバリー・ジャパン合同会社の代表取締役兼社長、デービット・マクドナルドに話を聞いた。
いまそこにある真実を問う!
ディスカバリー・ジャパンは、2019年9月に、SVoD(定額制動画配信)のサービスとして『Dplay』をスタートさせた。現在、半年強が経過した時点で、月間50万単位のユニークユーザーが利用しており、想定した計画より順調にファンを獲得しているという。
それには理由がある。
「例えば、6月の初旬から中旬にかけてDplayのTOPページでは #BlackLivesMatter運動に関連して、ドキュメンタリー番組『HATE~人はなぜ憎むのか~』全6話を無料で視聴できるように配置して強調しました。黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える #BlackLivesMatter運動の流れを汲んだエピソードが含まれており、これは2019年にシリーズとして放送・配信された番組です。スティーブン・スピルバーグとアレックス・ギブニーがエグゼクティブ・プロデューサーを、また、ジータ・ガンドバールとサム・ポラードが監督を務めています。多くの方に観ていただきました」
ディスカバリー「Dplay」のページには豊富なコンテンツを集約した特集が用意されている。