経済・社会

2020.06.23 06:30

ロックダウン中に炭素排出は低下も、エスカレートする環境論議

Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミック中に、世界の二酸化炭素濃度を観測した新たな研究が発表されたが、その結果は、環境をめぐる議論で対立しあう双方を煽り立てることになるだろう。

ハワイのマウナロア観測所で記録された2020年5月中の二酸化炭素濃度レベルは、過去最高に達した。その一方で、米国、ヨーロッパ、アジアの炭素排出量は、2020年1月から4月までのあいだ、17%から26%減少した。その理由は、新型コロナウイルスの感染予防を目的としたロックダウン(都市封鎖)だ。交通機関の利用や電力消費、工業生産量が減少したことで、工業国全体で炭素排出量が低下した。

学術誌『Nature Climate Change』で発表された研究は、ロックダウンが2020年末まで続けられた場合、二酸化炭素排出量は世界全体で7%減少するとしている。しかし、ロックダウンが6月半ばで解除されれば、排出量の減少率は4%にとどまるという。

とはいえ、排出量が減少しても、大気中に含まれる二酸化炭素の全体的な濃度は変化していない。それは、大気中にとどまる二酸化炭素の量を決定づける要因がほかにも多くあるためだ。科学者たちによると、「植物と土壌が、温度や湿度などの要素にどう反応するかによって、炭素排出は自然に大きく変動する」という。

こうした事実は、グリーンニューディール(気候変動対策に投資して経済成長を促す政策)のような急進的環境・エネルギー政策の支持派と批判派の双方に利用されるだろう。グリーンニューディールを支持する人々は今回の研究結果について、気候変動と闘うには思い切った政策を導入し、現代的なライフスタイルを根本から変える必要があることを示していると主張するはずだ。

一方、グリーンニューディールを批判する人々は、この研究結果を盾に、二酸化炭素の排出を招く要因は、人的要因よりも自然変動のほうが大きいと主張し、現代的なライフスタイルを大幅に変えたとしても、大気中の二酸化炭素量を減らす上で必ずしも効果的ではないと論じるだろう。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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