若者の関心度が高い美容やファッションから、ユーザーが暮らす地域の黒人経営のレストランを紹介する投稿まで規模も業界も様々だ。リストは一般のユーザーによる作られたものが多いが、一部のインフルエンサーなどが自身の愛用するブランドで黒人経営のものを紹介したこともSNS上でハッシュタグが広がった要因だろう。
また、欧米の若者を中心に人気のコスメブランドGlossierは、6月12日に人種差別を闘っている団体と黒人経営のベンチャーコスメブランドへの支援にそれぞれ約5400万円の資金を投じるとインスタグラム上で発表した。投稿には「私たちの目標は、人々の美容への見方を変えることです。そのためには、美容業界自体がまず変わらなければいけないと考えています」というメッセージとともに、支援を受ける条件などが記されている。応募期限は7月3日まで。
経済的な投票行動で声をあげる
このような消費行動について、日本女子大学・細川幸一教授(消費者政策・消費者教育論)は、エシカル消費の1つである「バイコット運動」ではないかと分析する。エシカル消費とは、消費者個人が社会問題の解決やそうした活動を行う企業を応援しながら行う消費行動のことだ。近年は、フェアトレード商品をはじめとして日本でも注目が高まっている。
「ボイコットの反対のバイコット運動の一種ですね。自らの消費行動を通じて社会に貢献するという考えであり、政治活動ではなく経済的な投票行動によって正義の実現を目指します。1990年頃から出てきた運動で、欧米では盛んな動きです」
選挙で1票を投じるのと同じ感覚で、自分の目指す社会に沿った活動をする企業の商品を購入することで支持を示すというのだ。人権問題はエシカル消費の中でも注目度は高く、今回は「人権差別を撤廃すること」が消費者の目的だと言える。また、今回の運動が大きく広がった理由としてやはりSNSの果たした役割は大きいという。
「SNSの発達でバイコット運動がやりやすくなったという側面はあるだろう。通信と放送の垣根がなくなり、誰でも放送局のような役割を持つことができるので個人の発信からでも、このような動きが広がりやすくなった」
投票率の低さが問題視されている若者世代だが、SNSを通してこのような消費行動に参加する若者は多い。彼らにとって社会的責任を果たしている企業で買い物をすることは、その企業を通じて社会に自らの意思を示していく方法の1つとなっていると考えられる。
一部では、社会問題に関与する企業をPRする活動の一環だと非難する声や、ステルスマーケティングを疑う声もある。しかし、企業の社会貢献に対する評価やエシカル消費が近年注目されるようになったことは間違いないだろう。
日本でこのようなバイコット運動が目立ちにくい背景には、「国内でマイノリティー問題などが大きな話題になっておらず、消費者の関心が薄いため注目されづらいのでは」と、を細川教授は指摘する。
日本では、企業がこのような社会的なスタンスを表明することをタブー視する雰囲気が残る。しかし、SNS上には国境がない。海外企業の対応を日常的に目にするようになった日本の若者たちの企業を見る目は変化している。