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シネマ未来鏡


また、終盤近くに再登場する現地の黒幕は、真っ白いスーツに身を包み、頭には「Make Great America Again」の赤い帽子を被っている。ジャン・レノがその役を演じているのだが、まるで「あの人」なのだ。このあたりはちょっとクスッとしたりもする。

ただ、この作品の素晴らしいのは、それらの強烈なメッセージだけではなく、観る者を楽しませるエンタテインメント的要素にも溢れているところだ。

実は、ベトナム帰還兵の4人は、隊長の遺骨収集の他に隠された目的を持っていたのだ。それは、戦争中に彼らが手に入れて、ジャングルの奥深くに埋めたCIAの金塊を探し出すというものだ。ということで、途中からストーリーは、老ベトナム帰還兵たちよる「宝探し」が主軸となっていく。

また「お遊び」のシーンもこの作品の魅力のひとつかもしれない。映画という表現を知り尽くした監督だけに、過去のベトナム戦争をテーマにした作品に対して、劇中でリスペクトしたり、ディスったりもしている。

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左端がスパイク・リー監督

フランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」(1979年)をイメージした場面もいくつか登場する。ホーチミンシティのクラブの名前が「Apocalypse Now」(映画の原題)であったり、老帰還兵たちが密林の川を遡るシーンでは、「地獄の黙示録」の爆撃シーンで使われていたリヒャルト・ワーグナーの「ワルキューレの騎行」が流されていたりする。

人種差別に対するメッセージがたっぷりと盛り込まれた作品であるにもかかわらず、映画的な仕掛けも随所に用意されており、エンタテインメント作品としても楽しめる設となっている。

4人のベトナム帰還兵を演じているのは、デルロイ・リンドー、クラーク・ピーターズ、 ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロック・Jrだが、特にこのグループのリーダー的存在であるポールの役を演じているリンドーの演技は高く評価されており、気の早い話だが、アカデミー賞にもノミネートされるのではないかとも言われている。

作品の半ばまではコメディ調も交えて進行していくが、後半、物語がシリアスな場面に差し掛かるに従って、ポールのモノローグや、彼の息子に宛てた手紙のシーンは、監督はさらに決定的なメッセージをリンドーの演技に託している。

世界が「Black Lives Matter」のムーブメントで揺れているまさにこの時期に、キャリア史上の最高傑作ではないかと言われる作品を、実にタイムリーにリリースしたスパイク・リー監督と配信したネットフリックスには、あらためて脱帽する。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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