「リーダー家業」を舐めないトップが真の「変化」を生める

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──最後にお二人からのメッセージは?

冨山:壊れる。生き延びる。キャッシュが大切になってくる。明確な優先順位をつくる。我慢だけでは現状は凌げない。デジタル・トランスフォーメーションに一気に突っ込む。今までやって来ていないから、のりしろは大きい。

これからのアプリケーションはリアル系が出て来る。実際に使える場所は医療、交通、ホテルなどのローカル型産業で、これからますますデジタル・トランスフォーメーションを活用するチャンスが増えてくる。

とにかく、原価に利益を上乗せするだけのコストベースのビジネスではなく、ローカルな観光産業に価値観をつけて、底抜けのサービス製品をつくるような試行錯誤が大切だと思う。

そして、あれもこれもの政策は禁物で、まずは優先順位を決め、「新しい社会トランスフォーメーション」を進めることが必要。大企業はコーポレート・トランスフォーメーション、ローカルはローカル・トランスフォーメーションを目指せば良い。

出井:冨山さんがすべて正論を語ってくれたから、ここでちょっと角度を変えて言わせてもらうと、僕は、今から2年間は、財務省にプライマリーバランスを忘れていただき、とにかくお金を刷って、今困っている人たちにお金が回るようにしてもらいたいと思う。その人たちがニコニコしながら活動できるような、「ニコニコ政策」で国家財政の舵取りをすることをお願いしたいと思っています。

コロナ危機でこれだけ経済システムを破壊されてしまったのだから、その影響で会社がつぶれて困っている人たちや、生活に不安を抱えている人たちのために、銀行も貸し倒れしないシステムをつくった上で、たくさんお金を刷って、「ニコニコの連鎖」で助ける、救っていく。

そして、何はともあれ、とりあえずこの危機を乗り越える。冨山さんが前述しているように、景気を早く取り戻したい、プライマリーバランスも整えたいというような、アレもコレもの政策はやめる。この危機の状況下では、アクセルとブレーキのバランスをとりながら、優先順位を念頭に入れた、メリハリのある政策を国に期待したいと思っています。


出井伸之:クオンタムリープ株式会社代表取締役会長ファウンダー。ソニー株式会社社長、会長兼グループCEOを歴任。また、その他にもGM、ネスレをはじめ、現在もレノボグループ、マネックスグループなどの社外取締役を務めている。現在は日本のベンチャー育成に尽力している。

冨山和彦:株式会社経営共創基盤代表取締役CEO。ボストンコンサルティンググループ、コーポレートディレクション代表取締役を得て、2003年に産業再生機構設立時に参画し、COOに就任。解散後IGPIを設立。パナソニック、東京電力ホールディングス社外取締役。経済同友会政策審議会委員長などを歴任している。

文=賀陽輝代 構成=谷本有香

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