「リーダー家業」を舐めないトップが真の「変化」を生める

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問題はそこで「何をつくるのか」、「何をやるのか」ということだが、それに関して言えば、日本は「区分け」が旧すぎて、多様性が見えない。その証拠に、いまだにソニーを電気会社だと思っている人たちは、日本人以外にはいない。

だから区切りを新しくして、多様性を見出す必要があると思う。僕はGMやネスレなどで、社外重役を務めていたけれど、世界を見る視点を広げるという点から、これから先、日本人にも外国企業の社外取締役をやって欲しいと思っています。

冨山:要するに、脳と肉体の問題で、ロボティックス系は脳だけではない。ロボット産業は肉体(ハード)と優秀な脳(ソフト)がセットでできることで、初めてビジネスチャンスが生まれる。

そう言った意味でも、日本のハードウェアテクノロジーは、まだまだ世界から注目されているので、そこに大きなビジネスチャンスがあると言える。デジタル・トランスフォーメーションをリアルモードで使うことが重要。

肉体と脳とのセットで価値観をつくる。客が何を求めているのかをカスタマイズすることが大切。例えば、消費者がエアコンを購入するとき、ただ単にエアコンが欲しいわけではなく、居心地の良い空間をつくりたいと思って購入するわけで、企業は消費者のニーズに対応するビジョンの構築が大切なのではないか。

ベンチャー、大企業にしろ、一番大切なのはリーダーのビジョンで、全てはリーダー次第。とにかく、強い経営者をつくる。もっとクレージーで斬新なアイディアで経営の舵取りをする人材を経営トップに配置するべきで、クレージーな発想を得意とするトップをどうやってコントロールするのかが、コーポレートガバナンス。

今の日本企業は何もやらない、そつのない経営者しかいない状況で、CEOという立場になったら、CEOとしての権利をしっかり行使する行動力が必要になる。

出井:そう、確かに今までのビジネスと違って、原価率は関係ない。それに面白いことに、かつてアメリカは、ハードに負けたのを悔し紛れにソフトで挽回したわけで、だからこそ、これからの日本はもっと「悔し紛れ」になる必要があると思うね。

冨山:特に今の日本にとっては、経済危機は深ければ深い程ベターだと思うし、それが旧い経営体型の企業を一度破壊して、再生させるチャンスだと思う。それに、日本は精密なハードをつくるという点において、今、世界で羨望の的となっていて、ここのシェアはこれから先も有望。

そして、今ここで本当に変わることができるかどうか、企業の真価が問われ、その意識改革が企業にとっても、天国と地獄の分かれ道になると思う。しかし、ここでロボットの大量生産を考えてはいけない。

とにかく、リーダー次第で現場の力を活かすことができるのに、日本は30年くらい前から産業構造が変わっても何も変えようとしないリーダーしか育てていない。つまり、リーダー家業を舐めているとしか言いようがない。今までこれだけ才能と人材を無駄に使ってきたわけだから、このコロナ危機をきっかけに、そろそろ気付いて立ち上がっても良いでしょう。
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文=賀陽輝代 構成=谷本有香

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